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SOS 096 擬餌核

『こんなもんかな~?』


 適度に手を加えた二人は、

かなり自然な振る舞いが出来るように

なっていた。


 サイエンは出来立ての

フランドルと近衛兵長をもう一度見て、

そこそこ満足したのか、

次に使う転移術式に興味が移る。


 特に待機命令をするわけでもなく、

二人は無造作に放置される。


『んふふ~、次はカルマリ~、

カルマリ~ってね~』


 《洞穴》の外では仲間達がどんどん

討伐されていくが、サイエンは気にしない。


 作ったものが壊れるのは、

とても当たり前な事だからだ。


 しかし、そんなサイエンでも、

外にいるカイケンと膳については

ほんの僅かに興味があった。


『ん? 何してんの? カイケンちゃん』


 姉妹(シスター)ズの仮面から

流れてくる情報画像の端に、

何やら揉み合っている二人が見える。


 正確には、カイケンが何かを

無理やり口に押し込んでいる

様子が見てとれる。


『……?』


 珍しくカイケンの手が止まり、

その様子を拡大確認しようとしたとき、

サイエンの身体に妙な感覚が走る。


 ある意味慣れ親しんだ感覚であるそれは、

《融合化》の感覚だとわかる。


『え? は?』


 意識が引き延ばされるように

渦を巻き、カイケンと膳の様子が

リアルな感触を持ってサイエンに襲いかかる。


 膳が泣きながら口に

突っ込まれていたのは

姉妹(シスター)ズの中身の一部、

サイエンの遺伝子情報を培養させて造った

擬餌核の破片だった。


『いや、それ食べ物じゃない……!』

『知ってる!』


 サイエンが至極マトモな突っ込みを言う。

それを遮るように突如出てきたのはカイケンだ。


《融合化》により、サイエンとカイケンの

存在意識が混ざり合い、カイケンは

膳を踏み台にしてサイエンの構築していた

転移術式に割り込んだのだ。


 膳にサイエンの生体情報を

無理やり取り込ませる事で、

カイケンは一瞬だけ《融合化》の

条件をクリアすることに成功した。


『やってることムチャクチャ……』

『あんたが言うな!』


 完全に不意を突かれたサイエンは

カイケンの万力のような喉輪で

首を決められる。

 カイケンよりも背の高いサイエンの

身体が棒切れのように軽々と

壁に押し当てられる。


 この時お互いに、お互いが()()である

ことには気付いており、それによりカイケンは迷い、

反対にサイエンは焦っていた。


 ただ、カイケンの狙いは別にあり、

今すぐ殺すことはどうしても出来なかった。


『膳くん! まだですか?!』


『あの、いえ、もうちょ………ぎぼぢう゛ぁるび』


 今にも吐きそうな嗚咽を漏らす膳。

カイケンは脳内に響く泣き言に

舌打ちをしつつ、

抑える右手に力を込めようとする。


 カイケンにとって、これは千載一遇の

チャンスだったからだ。


 そのとき、パチンと指を鳴らすサイエンが、

口元だけでニヤリと笑う。


 カイケンは振り返りもせず、

近付いて来るのが何かがわかった。


『膳! 早く!』


『おけ……です』


 膳のかすれた声を聞き、カイケンはサイエンを

手放した。

 離した瞬間に、背後から強烈な攻撃が

カイケンに襲いかかる。


『ちっ!』

 残像も残さない速さで、

カイケンはその攻撃を避ける。


 一瞬で攻撃圏外に逃れたカイケンに対し、

サイエンはドチャリと倒れ込みながら、

息を詰まらせるようにクックと笑った。


『カイケンちゃんって、やっぱり

なに考えてるか分かんないね~?

でも、まさかそんな方法で転移術式を

アタシから盗る何て、

思い付きもしなかったよ』


 二人に抱えられながら、サイエンは

ゆっくりと身体を起こす。


『そう? 驚いたでしょう』

『うん、そだね~』


 しばらく黙っていたサイエンは

何かを思い付いたように笑い出す。


『そうそうカイケンちゃん?

シルビアちゃんとソアラちゃん。

結構苦戦してるけど大丈夫?』


『大丈夫よ。そのためにわざわざあんたの

転移術式を借りに来たんだから。

…………じゃあね』


 次の瞬間、カイケンは自身を

転移術式で飛ばす。

 そのまま跡形もなく、綺麗に消えていった。


『なるほどなるほど。そういうこと。

…………でも、

こっちも良いこと思い付いちゃった。

面白くなりそうね~』


 足に力の入らないサイエンは

それでも飄々と笑い続けていた。



 

 


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