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SOS 086 vsフランドル5

「《凍波》」

 フランドルの術式の傾向を炎熱系と理解したリオンは

定石通りに相反する術式で対抗した。

 冷気の波動が音速のような速さで

フランドルへと襲い掛かる。


「《熱圏》」

 その攻撃に対してフランドルは

最小限の範囲で炎熱圏を自分の身体の周りに

構築して纏わりつかせる。

 結果、リオンの波動は打ち消され、

周囲の木々を凍りつかせるだけとなった。


 それほどの力を使ったわけではないのに、

かなりの力を使ったリオンの攻撃が軽くいなされる。


「そんな、あっさりと……?」

「呆けるな、続けろ!」


 顔色一つ変えないフランドルが、

リオンへ向けて距離を縮める。

 リオンは次の術式を練るが、上手く構築が出来ない。

 次に使うべき術式の判断を迷い、思考が混乱した。


「《滞泥》《残影》」

 オズマットの低い声が聞こえ、

フランドルの足が止まる。


 物理的に足を動かなくしたのもそうだが、

フランドルの視線が揺れる。

 リオンには見えていないが、フランドルにはこちらが

複数に分かれたように見えているからだ。


「嬢ちゃん、もっと単純に考えな」

 背後からオズマットに軽く右脇腹を叩かれ、

それが右へ動けという指示なのだと一拍置いて気が付く。


「才能を見れば、嬢ちゃんに分がある。

でも、今の嬢ちゃんはあいつに勝てない」

 自分の拙さを歯噛みしながら、

リオンは黙ってオズマットの言葉を聞く。


「嬢ちゃんの強みは何だ?

あいつを圧倒出来るのは何だ?」

 リオンは導かれるまま、オズマットの言葉を反芻する。


「(私の強さ……?)」


 まるで明確な答えが出ず、リオンの思考が止まる。

「やれやれ、いいか? 嬢ちゃん。

単純な話を言えば、まずその汎用性の高い術式だ。

そりゃお前さんの固有術式だろ?」

「は、はい」


 二人は迂回するように茂みを利用して姿を消す。

 その代わりに、フランドルにはピースが向かう。


「その固有術式の本質は何だ?

どうやってそこに行き着いた?」

「そ、それは……」


 リオンが独自の術式を編み出したのは

衝動期に起きた事件がきっかけだった。

 その事件の折に、リオンは精霊の存在に触れた。


「波です」

「ナミ?」


 オズマットが自然に聞き返す。


「この世界は揺らめきそのもの。

ゆりかごのような

波の上にたゆたっているもの」

「誰の言葉だ?」

「解りません。でも、その言葉を

聞いてから、分かりました。

確かに世界は波のような揺らめきに

満たされているのだと」


 リオンはありありと思い出す。

小さい頃はハッキリと見えた精霊もいまは見えない。

 けれど確かに、精霊はリオンに

世界の有り様を教えてくれたのだ。


「それがお前さんの強さだ。

その本質に自力で辿り着いた

才能そのものが、嬢ちゃんの強さだよ」


「ちょっとサーセン!

いい感じのとこ悪いんスけど、

一人はキツいっす!」


 フランドルとやり合っている

ピースの泣き言聞こえてくる。


「あースマンスマン。

…………ま、そんな訳だよ嬢ちゃん。

お前さんの強さは、あいつを越えている。

それが解れば、目を瞑ってたって勝てる」


 リオンは、久しぶりにこの話を他人にした。


 最初にこの話した両親は、それを聞いて

子供の言うことだと

全く取り合ってくれなかった。

 めげずにしつこく言えば、怒られたぐらいだ。


 師事した先生からも、有り得ない話だと

一笑に伏された。


それからは誰にも話すことは無く、

だんだんゆっくりと記憶も薄らいでいった。

 

 それがどうしたことか、湧き上がる泉のように

当時の記憶と光景が鮮明に浮き上がってくる。


「……行きます」

「おう、やっちまえ」

 オズマットはニヤリと笑う。

リオンの力が研ぎ澄まされていくのを感じたからだ。

 いまのリオンなら改造フランドルにも

遅れを取ることはない。


「はい! 先生!」

「(……いつから俺が嬢ちゃんの先生になったんだ?)」


 背筋に寒気を感じながら、

オズマットは戦いに身を投じる二人の生徒の

後ろ姿を見ていた。

 

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