SOS 080 開幕
「おお、ここが新発見された《洞穴》か……
何だか思ったよりも派手さが無いな……
おい、本当にここであっているのか?」
「はい、間違いございません。
先日確認した場所、風景と合致しております」
新国王が近衛隊をぞろぞろと引き連れて
《洞穴》にやって来たのは《巡幸》3日目の昼間だった。
案内役を買って出たカルマリ情報ギルドの
幹部は、さも自分の手柄であるかのように
今までの経緯を説明する。
それを聞きながら相槌を打つ新国王は、
細かい段取りの不備を指摘(検討外れだが)して
それを聞いた情報ギルドの幹部は
「なるほど」「さすがは新国王様」
などとヨイショしながら金言と褒め称えていた。
白けた空気を全く出さない近衛隊の面々は
さすがに鍛えられている。
「まあ、簡単に攻略してしまうのは
本意ではないからな……
仕方ない、様子を見ながら進むとするか。
よし、近衛隊長! ここに!」
「はっ!」
壮年の近衛隊長が折り目正しい所作で
新国王の眼前へと歩みを進める。
「これより、カルマ領カルマリでの
《洞穴》探索に入る。抜かるでないぞ!」
「ははっ!」
近衛兵全員が首部を垂れ、
新国王に恭順の意思を示す。
「リオン様は私と一緒に参りましょう。
リオン様ほどではないが、
多少の露払いはお任せ下さい。
女性を護るのは古来より男性の役目です故にな」
蟻が象を守るというのは甚だ滑稽であったが、
近衛隊長はそれはそれで安心することが出来た。
もちろん、新国王が聖導士様を守ることを真に受けたわけではない。
「はい、畏まりました。陛下」
リオンも恭順の意思を示し、集団は《洞穴》の中へと入っていく。
その集団の緩やかな探索を遠くから見守っているのは、
都市外周部のほとんどを管轄として任されている冒険者ギルドの連中だ。
新国王の意向により、彼らは
《洞穴》から距離を取る様にして待機していた。
「冒険者たちのような教養の薄い連中など、
リオン様の前に出すでない。
……職員の連中はまあ、致し方ないが、
それでもある程度のわきまえることは必要だろうて」
とまあ、新国王陛下からのありがたい金言もあり、
当初補佐を予定していた古株の冒険者たちと一部ギルド職員は
麓で待機することになり、冒険者ギルドのその他職員も
《洞穴》の外で離れて待機をするという無茶苦茶な指示になった。
しかし、それはそれで不味いと判断した側近は、
新国王の許可を得て、ある条件の元
近くにおいても良いと判断した職員だけ
近衛兵の集団と一緒に行動させることにした。
シルビア、ソアラ、サティとヒナギク。この四人がそれだった。
「何で私たちだけなんでしょうか?」
出発前の麓で、当然の疑問をソアラが発する。
「「「男を侍らせたくなかったんでしょう」」」
ソアラ以外の全員が心を一つにした。
「え? そんな理由で!?」
「「「ほかに、どんな理由が?」?」?」
「何でそんなに息ぴったりなんですか!?」
「おいおい、嬢ちゃんたち、あまりふざけ過ぎると、
あれだぞ、いろいろ面倒だぞ? まあ、知らんけど」
「凄く注意が雑っすね」
麓で最後の確認を進めていたオズマットが、四人を窘める。
その最低限度の言葉に、さしものピースも苦笑いをしていた。
「しかし、こうまで強行的な段取りを組まれるとは思っていなかったが。
宰相殿は何を考えているんだろうな」
「偉い人の頭の中を考えても、仕方ありませんね」
オズマットと向かい合っているギルドマスターのベントリが
本日、何回目かの溜息を吐いた。
さしものベントリも、予想の斜め上を行く沙汰だったらしい。
「けれど、こうなってしまった以上は申し訳ないですが、
あなた方に頑張っていただくしかないですね」
ベントリは四人を見つめる。
「はい、畏まりました。ギルドマスター」
サティが真面目に答える。
「わ、か、かしこまりました」
ソアラも同じ様に答える。
「(……後で特別手当を請求しましょう)畏まりました」
シルビアも一応同じ様に答えた。
「えー、でも《洞穴》内で野獣のような男達に襲われたらどうするんです?」
ヒナギクが答えた。
「あー、そうですね…」
ヒナギクを襲うなら、先にソアラが襲われているだろうと思うベントリだが、
決して口にはしない。代わりに、具体的な解決策を提案する。
「とりあえず、相手が近衛兵ならやっちゃって構いません。
もし新国王陛下に手を出されそうになったら、そうですね…
一回気絶させてから外に運んでください。
バレないようにお願いしますね」
「「「はいっ!」」」
「だから何でそんなに息が合ってるんですか?!」
女性陣の意思は固く団結していた。




