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SOS 079 擬態

『さあ、やって来ましたカルマリですよー!』


 猿面のサイエンが、派手な格好で街中を闊歩する。

サイエンに続くのは長身大柄なフランドルと、長身細身のアルマだ。

 姿形はもちろん、フランドルに至っては戦術ギルドの外套を

まんま羽織ったままで何一つ隠蔽する気がない様子だ。


 それでも、彼らが誰かに咎められることは無かった。


「どういう理屈の術式なんだ? 市内に入場するための門でも

完全に素通りだったが、術式展開の一つも感じなかったぞ」


 アルマが一人楽しそうに歩くサイエンに聞く。

答えてくれるとは思わなかったが、やや気になったので聞いたまでで、

答えがなければそれはそれで構わないという感じだ。


『いやいや、実のところ、強制的に通れる通行証を持っているだけなんです。

わくわくしそうな裏技じゃなくてすいませんけどね』

「しかし、それでは今のこの状態を説明は出来んだろう。

俺もこの男も、警備部の連中には手配書ぐらい周っているはず、

というよりも、こいつはやつらの身内だろ」


 サイエンがくるくると回りながら、すたっと立ち止まる。


『いいところに気が付きますね! さすがアルマさん』


 何だか馬鹿にされているようだが、

その程度のことを気にするアルマでは無かった。


『生物には相手を知覚する器官があるのですが、

私はそれに無意識下レヴェルで干渉しているのです。

だから、アルマさんがこの色気爆発の私に欲情しないのも

そういう操作をされているからなのですよ。

普通は思わず襲いたくなっちゃうでしょ? ねえねえ』


 こいつは人を小馬鹿にする天才だなと思いながら、

アルマはこのサイエンもまた普通では無いと考えた。

 であれば、こいつの背後にいる黒幕は一体どんな化物なのか。


 すでに恐ろしいという感情は昔に捨ててきたアルマだが、

それでも薄ら寒い感覚を感じるほどに、

このサイエンの行っていることは常軌を逸していた。


 簡単に言えば、ここに存在する不特定多数の全ての生物に

自分の認識をさせない術式を常時展開させているというわけなのだから。


「ん? 待ってくれ。そんな力があるなら、

お前一人で新国王の首ぐらいは取ってこれるだろう」


 アルマの当然の疑問に、サイエンは首を捻る。


『いやいや、私は天才ではありますが、万能ではないのです。

この術式にも穴がありまして、そういう荒事には向いてないのでございます。

でもまあ、女の子には出来ないことの一つや二つあった方が

可愛げがあっていいもんですよね』


 返事をするのも面倒なので、アルマは鼻を一つ鳴らすだけに留めた。


「で、これから俺たちは行軍に合わせて動けばいいのか?

隙を見てというのも手だが、厄介な奴が混ざっていたぞ」


 アルマの言う厄介とは、聖導士のことだ。


『ご心配なーくー。アレは私が食い止めます。

予定では明日はあのバカ陛下が《洞穴》に遊びに行くので、

そこをまとめて叩きます。やる機会はお膳立てしますので、

ど派手にザクッとやっちゃってくださいな』


 面倒な手順を踏むものだと思いながら、アルマはそれも良いかと

考えるのを止めた。


『ま、とりあえずそうなるとこの術式だけでは心もとないので、

変装というか擬態でも行いましょう』


 すでに変装をしているみたいなサイエンが言うとオカシイが、

アルマはまあそれもそうかと思う。


「で、どんな擬態をするというんだ?」

『木を隠すには森の中、と言います』

「…聞いたことのない格言だが、お前の国のものか?」

『違いますけどね。まあ、要するに、一番多い連中に紛れれば

一番バレないよねって話ですよ。

私たちは今から冒険者となるのです。

なんだかわくわくしてきましたねー』


 アルマは溜息をついて、くるくる踊るサイエンの後を

すたすたとついて行く。


 新国王の行軍は、まさに今最高潮となっていた。


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