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SOS 078 観光

「こちらがカルマリ名物カルマリ焼き本舗です。

でも売り始めたのは私がギルド職員に

なった頃なんですけどね」


 ヤラセ感が満載の売り方に

どこも一緒だなと思いつつ、膳は

名物カルマリ焼きを頬張る。


 《おやき》に似ているが、

《肉まん》にも近い食べ物だ。


 急遽ツアーコンダクターの真似事を

させられているソアラだが、意外にも

サマになっている。


 反対にシルビアは便乗のタダ飯を食べることに

夢中になっていて、ソアラの説明すら

聞いていない。

 今はカイケンと膳は客人扱いなので、

宿泊費や交遊費は全てギルド持ちとなっている。


『やっぱりカルマリは副都だけあって

街も人もお店も、活気がありますね~』


 感動しているか微妙なカイケンだが、

手頃なお土産を買っている辺り、

この《巡幸》のお祭りを満喫はしているらしい。


「でも、大丈夫何ですか?

その、こんな風に遊んでいて」


 膳の疑問ももっともだ。

あれほど緊張感のある朝礼(決起集会?)をした後で、

のんびり観光するなど、ちょっとどうかと思った。


「まあ何というか、カルマリ市内は

戦術ギルド警備部の管轄なんで。

問題があれば、あっちの責任だから。

冒険者ギルドの人たちの関心は正直薄いかな……」


 えー…、と思いながら、

膳はそういうものかととりあえず納得する。


 二人の会話はカイケンが

同時通訳しているのだが、

あまりにスムーズなので、

会話の間に不自然さが無い。

 そこにカイケンの隠れた凄みを感じる。


 近くのシルビアの腰には

見覚えのない武器がぶら下がっているが、

《神鉄如意》ではない。

 オリジナルは消失したので、

変わりに学生時代の武器を引っ張り出して

腰に据えたという。


 オリジナルについては、

ミラには不在だった細工の天才と

言われる人物の腕が必要らしかった。


 それもバカ高い金額を

要求されるらしく、タダでさえ

生活水準を切り詰めているシルビアは

だいぶ危ない食生活を綱渡りしているという。


「あ、もうすぐ来る。

王室近衛隊の御旗が見えます。

あっちあっち」


 フランクなガイドに誘導されながら、

膳は言われるがまま、そのパレードらしき集団が近づいてくるのを待った。


 何か警備などが厳重だったり、直視してはいけなかったりなどの、

決まり事でもあるのかと思ったが、実際はそんなこともなく本当にただの

パレードにしか見えなかった。


『戦時中はまさに行軍という感じだったようですが、

今ではその面影すらありませんね。

まあ、あなたのいた世界でも似たようなものなんじゃないですか?』


 カイケンが膳の表情を読み取って、耳元で囁く。


「そう、かも知れないですね。

……あの、カイケンさん」

『何でしょう』

「その……アルマさん、でしたっけ。

あの方たちの目的って、何なんですか?」

『……流浪の黒き淑女である私にはわからないことですが…、まあ

予想だけはお伝えしましょう。

おそらく、この《巡幸》が目的であれば、狙われているのは

新国王陛下ただおひとりでしょうね。

ありきたりにお命頂戴でも狙っているのではないでしょうか?』

「それって、大事じゃないんですか?」

『大事といえば、大事ですが、

まあなんですかね。あの新国王陛下に

そこまでの価値があるとは思えませんので、

目的はそこに近いどこかにあると思うのですが、

そこまではわかりませんね』


 えらい言われようの新国王陛下を乗せた豪華な馬車らしきものが

大通りまでやってきた。遠目なのでそこまで分からないが、

恐らくあの髭を蓄えたやや小柄な中年男性が新国王陛下とやらなのだろう。


 膳はそれをぼんやりと見ながら、その新国王陛下の一つ後ろの

大きな馬車から手を振る女性に目が留まる。


 紺碧の髪に、同じ紺碧の瞳。遠目からでもかなりの美人であることが

はっきりと分かる女性だ。


『エルダナリヤ・リオン聖導士様です。

美人でスタイルもいいでしょう?

でも、気を付けたほうが良いですよ』

「え?」

『見た目とは裏腹に、

腹黒さでは東国一だと思いますので』


 膳はカイケンの顔を見るが、

その表情はやはりわからない。

 しかし、その言葉の意図を答えるわけもなく、

プイとあさっての方角を見ると、ソアラにこう言った。


『ソアラさん。ソアラさん。

もし差し支えなければ、

先に今日泊まる予定の宿に向かいたいのですが』

「え? あ、いいですけど、いいんですか。

今いいところなのに」

『ええ、ちょっと人の多さに酔ってしまいましたので』

「そ、それは大変ですね、それじゃあ、すぐ向かいましょう」


 素直なソアラは言葉をそのまま受け取り、

パレードに全く興味を持っていないシルビアを引っ張りながら

四人はその場を後にした。


 カイケンは振り返りざまにパレードを一瞥すると、

ふんと息を吐き、再び視線を前に戻す。



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