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SOS 066 モヤ

 シルビアたちが打ち上げられた現場から、

やや離れた場所で、薄いモヤのような塊が

ゆっくりゆっくりと集まり出した。


 それは空気中から、地中から、

はたまた木々の中からもゆっくりゆっくりと

出てきては一所に纏まっていく。


『いやいや…驚きましたね~』


 右手でフランドルの襟首を掴みながら、

サイエンがやってくる。

 気を失っているフランドルは

引きずられるままに、その身を放り出していた。


 サイエンが声をかけると、

そのモヤが急速に集まり、一つの影になる。


 その影に色が付き、人の形を模していく。


 気がつけば、その塊はアルマへと復元されていった。


「……どういうことだ? 

金髪の子供もそうだが、銀髪の方も

急に異常な強さを発揮したぞ。

もう少し遅ければ、死んでいたな」


 少しも恐れを感じさせない声色だったが、

感嘆に似た感情は見てとれた。


 もともとの服装はボロボロだったが、

今は布切れ一つすら纏ってはいなかった。


『凄いでしょう。あれが異界召喚の副産物です。

戦時中なら喉から手がでるほど欲しがったと

思いませんか? はい、替えの服です』


 どこからともなく、

サイエンが質素な服を取り出してアルマへ渡す。


「上層部の連中ならな。

見たところ危な過ぎて実用化は難しそうだったぞ」


『それはほら、不確実ほど面白いじゃないですか』


 カラカラと笑うサイエンは冗談ではなく、

心底楽しそうな声で笑った。


 鼻を鳴らすアルマだが、

別にそれ以上の反応は見せなかった。


「で、どうなんだ?

まだ仕込みが必要なのか?」


『いえ、大丈夫です。

これでアルマ様の存在は複数のギルドが

認識する形となりました。

 次は《巡幸》を待って動きましょう』


「…どうするんだ?」


 それは興味からくる質問ではなく、

単なる確認作業に過ぎなかった。


『カルマリを落とします。

新国王も落とせたら、

落としちゃっても良いですよ?』


「お前さん、反体制派だったのか」


 特に驚きはなさそうな声で、

アルマはサイエンに言う。


『違いますよ。新国王が

ほんの少し目障りなだけです』


 それを反体制派というのだろう?

と、アルマは口には出さずに思った。


「…しかし、あれは厄介だぞ。

近衛兵はどうにでもなるが、

冒険者ギルド連中は骨が折れる。

お前さんの対峙したさっきの二人は、

多分条件さえ整えば《宝銘》でも危うい」


『それほどですか』


「ああ、二人とも普通じゃない」


 それをあなたが言いますかと思いつつ

サイエンは反対に聞く。


『なら、さっきの二人はどうだったんですか?

アルマ様が相手するなら、どっちがいいですか?』


 サイエンは意地悪な質問を投げかける。


「やれと言われれば、

どっちでもやるさ。

殺せるか殺せないかで言えば、

殺せないことはない。

別に俺が死んでも、契約に変わりは無いんだろう?」


『はい。私共の目的が遂行出来たあかつきには、

契約書の通りに遂行させていただきます』


「なら良い。好きに使え」


 服に袖を通し終えたアルマは、

ゆっくりと立ち上がる。


 死を恐れない《宝銘》が

カルマリに牙を向いた。


 


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