表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/253

SOS 061 分解

「トールさん!」

「!」


 シルビアの声で、トールはやっと硬直から抜け出す。

ただ、目の前で起きている事態は変わらず最悪であり、

向こうの方で行き倒れているガジェットの

背中が辛うじて見えている。


「しっかりして! 次はあたしが行きます!

補佐をお願いします!」


 相手に作戦が筒抜けになる愚策を

口にしなければならないほど

トールの動揺は深刻であり、

シルビアは思考を回転させ続ける。


 ここに至るまで、

三人は世間話をしていたわけでは無く

お互いが必要と思われる情報を交換していた。


 もちろん、ソアラのような

能天気さをシルビアは持ちあわせていないので、

必要なぎりぎりを教えるに留めたが、

それでも連携に必要な情報はお互い共有出来ていた。


 ガジェットは直接的な攻撃を得意とする術士であり、

その実力は士官候補生の中でも上位に入るという。


 一方、トールは補佐を得意とする術士の家系であり、

本人もそちらの方が適正があるらしい。


「《転儀・重複術式・風火輪》」


 シルビアの独自術式は、その固有武具である

《神鉄如意》の特性を最大限に生かしたものだ。


 普通は才能のある術士の中でも、

特に才能のある者だけが扱える

重複術式をシルビアは疑似的に模倣することが出来る。


 シルビアの周囲を風の防壁が纏い、さらに《神鉄如意》へ

火属性の円輪を纏わせる。相手の攻撃を防ぎつつ、

防壁の中から攻撃をすることが出来る特殊術式だ。


 もっとも、身体能力の向上にまで手が回らないため、

先ほどのガジェットの一撃を難なく

捌いた相手に通じるとは思いにくいが、

そこはトールの補助を期待する。


「《武装身操》」


 立ち直ったらしいトールの補助術式が構築された。


 身体全体の能力を向上しつつ、感覚も鋭敏になる。

副作用的に攻撃的な精神状態となるが、それでも先ほどの

《衝動》ほどの狂いはない。


 これなら、抑え込める。


「考えたな。

本質でも見えたか?」


 子供をあやすように、

相手の男は怯むことも迷うこともしない。


 まるでそれは、年嵩の熟達した教師が

年端もいかない子供へと物事を教えるような

鷹揚な立ち振る舞いに思えた。


 力いっぱいに地面を蹴り、

シルビアは《災厄》を名乗る男に接近する。


 やはり先ほどのガジェットほどの速度は出ないが、

シルビアの狙いは別にあった。


 シルビアは相手の能力を『分解』に特化したものと読む。


 同時に《災厄》の情報を頭の中で捲るが、確か彼は

《毒操》と呼ばれていたと記憶している。


 そういう意味では、この男と《災厄》の人物像が

僅かにずれていると思えた。

 しかし『分解』に特化した能力であれば、

毒を操ることを模すことも可能だろう。


理屈屋のシルビアは、彼の発言を端から嘘と考えていた。


「少し面倒だな」


 ここにきて初めて、相手の男が

シルビアの攻撃を避ける動作をする。


 動きが速いわけではないが、無駄がなく隙がない。


 しかし、やはり『分解』する条件が整わないのか、

ガジェットに見せたような捌き方を一旦止める。


「まだ行きます!」

「はいっ!」


 シルビアとトールは、そのまま全力で攻撃を仕掛ける。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ