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SOS 059 木の葉

 山間に出来た道は、

予想以上にひたすら真っ直ぐ続いていた。


 馬が侵入出来るような大きさではなく、

三人は仕方無しに下馬する。


 少し迷うが、早めにカルマリへと戻すため、

戦術ギルドの記章を入れた書簡を首にかけ、

早馬だけをカルマリへと走らせる。


 彼らだけなら、早く到着する事だろう。


 道を駆けながら、

三人は念の為に、罠に対しても索敵をかけつつ

正体不明の不審者を追う。


 道は不思議な作られ方をしており、

本当にまるで空間ごとごっそりと削られたように

延々と長く遠い道が敷かれている。


「…一体、どうやって作ったんだ?」


 トールの口から自然な疑問が出てくる。


「読めないな…あなたはどう思う?」


 ガジェットに水を向けられたシルビアは、

思っていたことを口にする。


「…いくつか考えられますが、

想像の域を出ません」

「それでもいい、教えてくれ」


 シルビアは少しだけ頭の中を整理すると、

二人に自分の考えを話し始めた。


「一つは、溶かす方法です。

もう一つは、腐らせる方法。

どちらも特殊な物質を生成出来れば可能ではあります。

もちろん、強引に削り取ったとも考えられますが、

それにしては切り口が綺麗過ぎます」


「なるほど、他には?」


「…あり得ないと思いますが、

空間消去させたとか、ですかね」


「…もしそうなら、神話級の怪物がいることになるな」


 ガジェットが大して面白くもなさそうに鼻を鳴らす。

シルビアへ向けた威嚇ではなさそうだが、

実際に正体の分からない相手に対する敵意のようなものが

そういう形で現れたのだろう。


「しかし、なるほどな。そうして見れば、

対応策は無きにしもあらず、と言えるか。

ありがとう、少し落ち着いたよ」


「いえ、どうも…」


 シルビアはガジェットの言葉に、ちょっと驚く。

それは彼が戦術ギルド職員ということもあるし、

高名な貴族の子弟であることも関係していた。


「…ん? どうやら出口が近いな。

警戒は怠るなよ」


「「はい」」


 トールとシルビアの声が揃う。


 道を抜けた先には、広い空間があった。

山間の中にある、開けた空間であり、

生き物の気配こそないものの行楽には持ってこいの場所だ。


 何とも呑気な空間に、三人はどうとも言えない表情となる。


「…索敵は?」

「ありません」


 ガジェットとトールの会話を聞いて、

シルビアは何故か不安に駆られる。


 そもそも、索敵術とは自分を中心にして

神導力を放射線状に飛ばし、動的な対象物を割り出す術式だ。


 遮蔽物に隠れていれば、見つけにくい場合もあるし、

相手が完全に停止している場合は対象物としては出てこない。


 そして、もう一つ。普通はあり得ないが、

その神導力そのものに干渉された場合は

索敵術に限らずそのほぼすべての術式に対して

無力化が可能になるだろう。


「よし、進むか」

「はい」


 二人の会話が、シルビアの危機感を煽る。

それではまずいと、直感する。


「お二人とも、お待ちください」


 理由も告げず、シルビアは《神鉄如意》に力を込める。


「《略・風陣》」


 三人を中心にして、風の渦が巻き起こる。


 味方以外に対しての攻撃術式だが、

それほど威力は高くない。

 ただ、今回は山の中というわけであり、

同時に巻き上げられた木の葉が周囲に渦巻いている。


「おい、どうしたんだ?」


 ガジェットの声には答えず、シルビアはある一点を指差す。


「…そこの若いの、やるなぁ。

単純な方法だが、

思いつきでそれをやる奴は中々いないぞ。

あの坊やよりも、

才能があるじゃないか」


 そこでは木の葉が次々と触れては消えていく。

ポッカリと空いた空間に居たのは、

痩せ細り、背の高い老人だった。


 どういう手品か分からないが、

完全に姿を隠していたその男は、

唇だけをひび割れた枯木のように歪め、

薄く笑っている。







 

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