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SOS 058 道

 シルビアはガジェット、トールとともに、

カルマリへと急いでいた。


 それほど乗り慣れていない早馬には

ややてこずったものの、遅れをとらずに

何とかついて行く。


 少し気になるのは、

二人のシルビアに対する態度だ。


「シルビアさんは大丈夫ですか?」

「疲れたなら、そう言って欲しい」


 トールがさん付けしてきた。

ガジェットはまだ普通だが、ひしひしと

余計な気遣いを感じる。


「大丈夫です。先を急ぎましょう」


 とにかく一刻も早くこの場を逃れたいシルビアは

休憩も固辞して駆け続けた。


 しかし《洞穴》の麓にある宿場町へ

来た時には、さすがに休憩を挟むことにする。


「ギルドへ報告して来ます」

「私も、ちょっと確認したいことがあるので」


 シルビアはトールにそう答え、

二手に別れる。

 ただ、ガジェットがシルビアに付いてきたのは

致し方ないだろう。

 ガジェット本人は冒険者ギルドなど用事はないが、

シルビアの単独行動は問題があった。

 それは、シルビアを見失う訳にはいかないという

戦術ギルドの意思表示だ。


「やけに騒々しいですね…」

「そうだな」


 シルビアとガジェットが顔を見合わせる。


「だからもう馬車とかは

無いって言ってるでしょー!」


 冒険者ギルド支部前で受付嬢の怒声が響いてくる。


 シルビアはギルドの掲示板を見て、

状況を直ぐに理解した。


「とりあえず、行きましょう」

「挨拶はいいのか?」

「半殺しにされますよ」


 シルビアもすぐに記章を外し、

一般人の振りをしてその場を後にする。


 早馬のいる場所まで戻り、

シルビア達は今後の動きを相談した。


「とりあえず、カルマリに戻るのが優先です。

幸い足も在ることですし、

可能な限り早めに出立しましょう」

「君の相方はいいのか?」


 ソアラのことだ。


「構いません。私が戻らない場合は、

カルマリで合流する手筈になっていますから」


 それ程の嘘は言っていない。


 シルビアの頭の中では、悶々とした考えが

とめどなくグルグルと巡っているけれど、

顔には出さず、立ち上がる。


 腰には、馴染んだ感触の

《神鉄如意》が差してあった。


「行きましょう。悪い予感がします」


 理屈重視のシルビアにしては珍しく、

肌の感覚が不穏な空気を告げていた。


 疲れた身体に鞭を打ちながら、

シルビアは再び早馬に乗る。


 馬車の通る本街道は何時になくごった返しており、

こうなれば遠回りでも、旧街道を進んだ方が早いだろう。


 三人ともそう判断して、手入れのされていない

過去の遺物を駆けていく。


 そうして代わり映えのしない風景が続くが、

カルマリの領内に近づくに連れて徐々に

その表情が変化していく。


《巡幸》を前に、歓迎の飾りがチラホラと目立って来た。


「こんな時期に、冗談じゃないよな」

「全くだ」


 トールとガジェットが何気ないやり取りをする。

シルビアは、ふと気になった。


 むしろ、こんな時期だから起きたこと、

なのでは無いだろうか。


「…! おい、あれを見ろ!」


 先頭にいるガジェットが慌てて

早馬の脚を緩める。


 何とかトールとシルビアも脚を止め、

ガジェットの視線の先に在るものを見た。


「何だ、これは?」


 それは、山間にポッカリと空いた道だ。


 もちろん、獣道ぐらいはどこにでもあり、

その程度なら不思議でもなんでもない。


 問題はそれが、丁度、人が一人通れる大きさで

直線的にカルマリの方へ向かっている事だ。


 領内への侵入を試みたとしても、

あまりにも開けっぴろげ過ぎる。

 警戒も何も無い。


「無視する訳にはいかないか…」


 ガジェットが葛藤の末、そう呟く。

トールはもちろん、シルビアも頷くしかない。


 それはギルド職員の定めみたいなものだ。





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