SOS 052 行進
三つの影が並んで歩く。
その様子は幽鬼のようであり、とても不気味な様子だった。
先頭を黙々と歩くアルマはずっと下を見ているが、行く手を阻む木々を
ものともせず淡々と歩いている。
アルマの身体に触れそうな遮蔽物は全て、
触れると思った瞬間に蒸発したように消えていくので、
ただ歩いているだけなのに山の道は
身体を蝕まれる獣の様に、痛々しい傷跡を残していく。
『アルマ様。それ大変じゃないですか?
あと、追跡されやすくなりますし、
先頭代わりましょうか?』
アルマのすぐ後を歩くサイエンが、提案をする。
実際、楽は楽だが、面倒なことも多くなるからだ。
「…お前は、俺のことを怖がらないのだな」
後ろを振り向かず、アルマは答える。
役割を代わるつもりは無いようで、そのことには答えない。
『まあ、化け物という意味では私も耐性がかなりありますのでね』
本人を前にして、かなりの言いたい放題だ。
「…ふっ、そうか。なら納得だな」
アルマは大して気にもしておらず、そのまま流した。
『でも、このフランちゃんも操りながらだと、
面倒じゃないですかね。大丈夫ですか?』
最後尾についているのはフランドルだ。その顔は土気色をしており
生気は全く感じられない。
死人のような顔で、声一つ発さず、ただ二人の後をついてきている。
「問題ない。むしろいい練習だ。
俺も、久々だからな。こうして外へ出るのは」
アルマの目の前に大木があった。普通に考えれば迂回して進めば
よさそうなものだが、頑としてアルマは道を譲らない。
そのまま直進して、大木を根元から消失させた。
結果、大木は大きな音を立てながらその立派な体を倒すに至る。
『アルマ様…』
サイエンが呆れたように声を出し、その光景を見やった。
最初はアルマの存在感に圧倒されていた山の動物たちも、
あまりの傍若無人っぷりに我慢出来なくなったのか、
次第にざわつき始めた。
そこへ、この近辺の主と思われる大きな蜥蜴がのっそりと現れる。
ゆうに馬の十倍を超える体格で、馬車なら一口で平らげてしまいそうな風貌だ。
『どうします?』
「問題ない」
トカゲは憤りに駆られ、大きな口を広げてアルマ達へと直進する。
名乗りもせず、怯えもせず、揺るぎもせず、意識もせず。
アルマはふいとその指をトカゲに差し向けた。
その瞬間、トカゲの身体が硬直したかと思うと、
直後には口角から泡と血飛沫を撒き散らして
その巨体を沈ませた。
辺りには再び、妙な静寂が訪れた。
「…すまんな。加減している余裕はないんだ」
『アルマ様。そろそろ見えてきますよ。
あれがカルマリです』
サイエンは目の前の異常事態を気にもせず、
むしろ楽しそうな口調でそう伝えた。
三人の通った後は、木や花はもちろん、草すら残ってはいない。




