SOS 051 殺到
「え? ナニコレ?」
冒険者ギルドの掲示板を見るため、
渋々重い足取りで支所にやってきたソアラは
その状況に自分の目を疑った。
冒険者ギルドの掲示板の前に
人だかりが出来ており、突貫での共同依頼を
申請するために長蛇の列も伸びている。
そして勿論、諍いがあちらこちらで
勃発していて、収集など付けようがない。
「ちょっとちょっと!
ちゃんと順番は守って下さい!
そこ! 数字順だっつってんでしょうが!」
ギルド職員慌ただしく、
声が潰れるかと思うほど叫んでいた。
「ったく、カルマリのギルマスは
何を考えてるのよ!
ただただ報奨金を倍額にする何て
正気とは思えないわ!」
それを聞いて、ソアラは反射的に
自分の身分記章を隠した。
巻き込まれては堪らないと
本能が叫んだためだ。
「あん? 何? お嬢ちゃん
何か用事?!」
殺気立った受付の女性に、
ソアラは何も分からない風に尋ねる。
「え、えと、何かあったんですか?」
「カルマリのギルドから依頼が入って
あの有り様よ。
今なら通常依頼は二倍の報奨金。
特別依頼に至っては三倍よ。
裏も何も考えないアホたちが群がって
もうどうしようもないわけよ!
分かる?!」
正体を明かす訳にはいかなくなったことは
よくわかった。
しかし、どうしてそんな事になっているのかは
全然分からない。
こんな時にシルビアがいればと
思ったが、それも叶わない。
あの《融合化》の折に、
シルビアから今後の指示を貰ったからだ。
「と、とにかく、カルマリへ帰らないと」
「帰れないわよ!」
ソアラの独り言に、受付嬢が噛み付いた。
「え! どうして」
「貸切も乗合も全部、移動手段は
予約で満杯だからよ!」
ギルドを出たソアラは途方に暮れた。
宿への帰る道すがら、うんうんと唸るが、
良い案は何も浮かんで来ない。
そこへ、不思議な人影が近づいてくる。
『(…やっと普通にできるわ)おや、お嬢様。
いかがされましたか』
現れたのは、不可思議な戌のお面を被った
黒ずくめの人影だった。
多分、女だと思うが性別すら定かではない。
「えっと、いや、その…」
怪し過ぎて、どう応えれば良いのか
返答に迷うソアラに、その黒ずくめは
自分から正体をバラす。
『申し遅れました。
お父様にはいつも大変懇意にしていただいております
しがない武器商人のカイケンと申します。
以後、お見知り置きを』
丁寧なお辞儀を眺めながら、
ソアラの心は冷めていた。
さっきの言葉が、自分ではなく、
父親に対するものだと分かったからだ。
「…それはどうも。
あの、カルマリに帰りたいんですけど、
手段が無くて…」
『なら、良いものが御座いますよ。お嬢様』
カイケンがそう答えた。




