SOS 046 差異
「いくぞ、しっかりと目に焼き付けろ!
《炎蛇掌》」
フランドルの両手に神導力が集まる。
集まる端から力は炎に変換され、熱を帯びる。
この技の利点は二つある。
一つは蛇の動きを模すことで、
直線的では無い攻撃が出来ること。
そしてもう一つは――
不意に、アルマの姿が消える。
先ほどと同じような探査・感知をすり抜ける術のようだ。
もちろん、それを読んでいないフランドルではない。
「愚か者め!」
フランドルは構わず双頭の蛇を放つ。
蛇を模す利点のもう一つは、特性付与だ。
蛇の特性である「熱源感知」により、
五感を遮る隠蔽すら無視して
敵に襲い掛かる自動追尾の技なのだ。
二つの蛇がそれぞれの方向へと飛び出す。
そしてそのまま生木の大木へと噛みついた。
もうもうと煙を上げつつ、大木は半ばから折れかかる。
しかし、どうも相手を捕らえたようには見えない。
ただ、大木を焼き焦がしただけだ。
「…なに! どうしてっ!」
「おいおい、若いの。
そんなお手本を喰らった日には、
死んじまうだろうに」
気が付けば、アルマはまだ
フランドルの正面に漫然と立っていた。
「なら、これはどうだっ! 《熱砂陣》」
「……おいおい」
再び集まろうとしたフランドルの神導力は、
急速にその結びつきを失い、ただの輝きとなって消える。
「……なにっ!」
「だから、死んじまうだろう。
もう少し穏やかに出来ないのか」
アルマがふとフランドルに意識を向ける。
それに気が付いたフランドルは
咄嗟に自分の口元を押さえた。
「……んん? 何をやってるんだ?」
フランドルは片手で腰の帯刀を解き、
武器を抜く。
『ああ、あれですか。
あれはですね、アルマ様の力は
《毒操》と呼ばれているからですよ』
《毒操》つまり、毒物を自在に操る力だ。
「……そうか、そんな風に言われていたのか」
何かに納得したアルマは、どこか遠い目をする。
ただ、それも一瞬で、再びフランドルを見た。
その時、フランドルは
既にアルマへと飛び掛かって来ていた。
「せっかちな男だ……昔の戦術ギルドは、
もう少し騎士道精神みたいなものがあったが…」
アルマは何かを呟く。
すると、フランドルの視界が大きく揺らいだ。
「……ぐっ、なっ、にっ?」
そのまま、生まれたての小鹿の様に、
くたりと地面に横たわる。
「毒を操る……まあ、それならそれで構わないか。
悪いが、最初から話をするつもりなど無かったのだよ。
若いの。
少し面倒だろうが、協力を願おうか。
心配せずとも、お前が何かを頑張る必要はない」
アルマがフランドルに手をかざした。




