SOS 045 対峙
フランドルは、実際のところ信じてはいなかった。
武器商人に限らず、こう言う手合いは結構いるからだ。
即ち、自分の売りたいものを誇大広告して、
興味を引かせるやり方だ。
よくあるのは「王室御用達の品」といいつつ、
実は「候補になったことがある」
または、もう少しで「選別」されたが、
惜しくも逃した。
など、その強調部分をぼやかしたりするものだ。
今回も「実力は《宝銘》と遜色ない」とか
嘯きつつ、
自分のお気に入りの手駒を紹介でもするつもりなのだろう。
フランドルはそう解釈していた。
警戒を隠しつつ、探査と感知をしていたのは、
不意打ちに備えてのことだった。
相手が客を害したとあっては商人の名折れ、
そうなればその弱味を使って
一生こき使ってやろうと思っていたのだ。
しかし、まさか実際に《災厄》と呼ばれる男を
連れてくるとは夢にも思っていなかった。
「冗談だろう、歴史上の人物が生きているはずがない」
先ほどの常軌を逸した業は忘れ、
フランドルは努めて平静を装った。
『いえいえ、わたくしは正直と真心を胸に、
日々精進しておりますのよ』
サイエンがふさけた調子でおどける。
フランドルとしては、付き合っているのも苛立たしい。
カルマリ郊外にある、ただの森。特筆すべき希少種も害獣も、
災害も鉱物も何も無い、至ってどこに出もあるその中で、
フランドルは歴史上最悪と呼ばれる犯罪者に対峙している。
アルマと名乗る男は、確かに遥か昔に習った教科書に
乗っている写し絵に似ている、気がしないでもない。
ただ、歳を取った老人など、
体形が似ていて髪と髭を伸ばせば
誰がどうしてもあまり変わらない。
証明など出来ようもないだろう。
証明出来るとしたら、その腕以外、あり得ない。
ここでフランドルは、
やはりこいつは偽物なのではないかと改めて考える。
相手がいくら《宝銘》持ちであっても、
得手不得手がある。
《無形のアルマ》とはいえ、
奴は肉弾戦が得意な術士ではないはずだ。
こんなノコノコと顔を晒すはずはない。
「…よかろう。そこまで言うなら、
見せてみろ。お前の実力とやらを」
「……」
フランドルの挑発めいた言葉に、老人はただ黙っている。
その様子を見て確信したのか、
フランドルは立て続けにこう言った。
「どうだ、出来ないだろう。
しかしまあ、実力の示し方も知らないとは、呆れたな。
仕方ない、俺が手本を見せてやろう」
フランドルが構える。
「《宝銘》とまではいかないが、
俺も名のある方に師事している。
《炎熱のハイランド》様の名前ぐらいは知っているだろう。
我が戦術ギルドが誇る、最強の鉾だ」




