SOS 040 略奪
「あなたは…?」
戦術ギルドの一員には見えない。
彼らはこういうおふざけを
何より嫌うからだ。
「貴様、誰だ!」
「いつの間に…!」
ガジェットとトールは驚きながらも、
身体は勝手に自衛行動を取る。
二つの剣閃が同時に闖入者を捉えた。
『っと』
相手の黒づくめは、ちょっと驚いた感じで
二つの軌道を強引に掴み取る。
それこそ力業だ。
金属同士がぶつかり合うような、
甲高い音が響く。
『フランドル様は既にカルマリへ
戻られる準備をしておいでです。
お二方は先にカルマリへ向かうよう
ここに指令を頂いております』
淡々とした口調で、
相手はフランドルの印が施された
書簡があることを仄めかす。
相手はそれ以上に交戦する気配も無く、
ただ黙って反応を待っていた。
「…だとしても、
どうして外部の者など」
疑問を持ちつつも、
ガジェットは剣を納める。
トールも同様にだ。
ただ、いきなり切りかかったことは
謝ったりしない。
そのように教育されているからだ。
『フランドル様のお考えです』
それだけ言うと、黒づくめは懐から
書簡を出してきた。
「…それはそうと、
名乗ったらどうだ?
通り名はぐらいはあるだろ」
書簡を受け取りながら、
ガジェットはそう言った。
『……カイケン、とお呼び下さい』
逡巡した後、カイケンはポツリと
呟いた。
『そうそう、
そちらの方に用事があるのです。
一緒に来てほしいのですが』
わざとらしくも、
カイケンはシルビアに話を向ける。
ガジェットとトールは目配せする。
「流石にそれは、
この指令書簡でもそこまで…」
『ちょっと失礼』
二つの間を抜けて、
カイケンはシルビアに迫る。
ほんの瞬きをする間の
出来事だった。
「おいきさ…!」
カイケンはシルビアを抱えると、
窓を破り中空へと飛び出した。
雨戸が破られ、日の光が差し込む。
閉め切った部屋では判らなかったが、
今は昼間だったらしい。
目で影を追いながら
二人は術の行使を迷う、
協力者予定のシルビアに当たれば
厄介なことになるからだ。
少しの迷いが隙を生み
二つの影は街へと消えた。
「畜生!」
ガジェットは粉々になった窓を見て
行き場のない怒りを露わにする。
一方、カイケンに抱えられたシルビアは
大人しく黙っていた。
『助かります』
それだけ言うと、
カイケンは屋根を
黙々と走り続けた。
『ここで良いでしょう』
カイケンはシルビアを街外れの
草原に連れて来ると、ぽいと地面に下ろした。
『さて、あの少年について、
知りたいことは有りますか?』
カイケンはさらりと聞いてくる。




