SOS .037 露見
時間は定かでは無いが、
場所は室内と見て問題ないだろう。
焦る気持ちを抑え、
まるで当たり前のような口調で質問する。
就業前にこの程度の事故は覚悟していたし、
一応それなりの訓練も受けている。
「目隠しをしてるってことは、
生かす気があるってことですよね?」
「…」
相手が押し黙る。
見られたくない、という意思表示だが、
反対に言えば、口封じの必要性を
減らすための措置でもある。
「となると、私がどこの所属で
誰かも、ある程度知ってるってことですね?」
「…」
「沈黙すると言うことは、
そういうことですか。
情報ギルド……いや、違いますね。
それなら……」
「なんつーか、可愛げがねえな。
モテねえだろ、あんた」
シルビアはイラッとしたが、
今の状況を踏まえて
文句は言わないことにする。
得物は確認出来る範囲近くには無く、
服に隠した武器も全て没収されている。
どこまでまさぐったか、聞くだけ野暮だろう。
手足の自由も無く、動かせるのは
口と首だけ。完璧な拘束だった。
実務が多いギルドの連中だろう。
「見事な処置ですね。
どこの支部ですか?
本営?」
そのあまりに完璧な仕事振りから、
一旦は同業者の線を疑った。
冒険者ギルドとて、一枚岩ではない。
仲間を疑うのは基本中の基本だ。
しかし、その丁寧過ぎる仕事から、
生真面目なギルドの存在に思い至る。
「違う…って、しまった。
言わされた。ほんと面倒な捕虜だなあんたは」
若い男が舌打ちする。
先程の運搬係とは違う人間のようで、
どことなく育ちの良さを感じた。
そしてつい口を滑らした、
捕虜という単語にシルビアはピンとくる。
「ああ、フランドル様の部下ですか」
「…」
さっきとは違う沈黙が流れる。
「どうした? 目を覚ましたのか」
そこに、もう一人の声が聞こえた。
シルビアは咄嗟にかまをかける。
「聞き覚えのある声ですね。
確か、ライトニング家のご子息様でしたか」
嘘だ。声を聞いた事など一度も無い。
ただ名前を知っているだけだ。
「…どういうことだ」
「こいつヤバいよ。
俺達の手に負えない。
察しがよすぎる」
二人の声が僅かに聞こえてくる。
しばらく二人は議論したものの、
結果としてシルビアは視覚的な自由を得た。
するすると目隠しを外されていくと、
戦術ギルド専用色の敷布で作られた
外套を羽織る二人が立っていた。
最初から部屋にいた青年が、
体を起こしてくれる。
「シルビア・セイレンだな。
単刀直入に言う。
しばらくここで捕まっていてくれ」
そう声を掛けてきたのは、
ソアラより明るい金髪の青年で、
その鍛え上げられた体は服の上からでも
よくわかる。
「申し遅れた。
指摘の通り、俺がライトニング・ガジェットだ。
今はフランドル様の部下として、
カルマリの冒険者ギルドへ出向している」
「そこまで言うってことは…」
シルビアは状況が推移したことに気がつく。
「事情は教える。
内密に我々に協力して欲しい。
そこまで察しが良いなら、
お前にとっても悪い話じゃ無いはずだ。
わかるだろう?」
シルビアはさらなる
問題を抱えることになったが、
否やはなかった。




