SOS .036 調書
「さて早速本題に入りたいんだが
いいかな」
「やれやれ、相手が《不全》のオズとはな…
俺もヤキが回ったもんだぜ」
「つか、よく気が付いたな?
結構ばれないようにしたつもりなんだか」
「カルマリくんだりまで来るからには
そりゃ用心するだろ。
お前さんと、《不退》には気をつけてたからな。
実物見たのは初めてだが、意外に若いな」
「うん? そうか? 初めて言われたな」
「はいそこ、無駄口を叩かないで」
オズマットと山賊頭の会話を
サティがバッサリと切り捨てる。
「世間話は後でも出来ますよね。
早く調書を取って下さい」
「…あー、ハイハイ」
「ハイは一回」
母親のようなダメ出しを受け、
オズマットはバツが悪そうにしながら
山賊頭に向かい合う。
サティは既に二人調書を終え、
今は三人目に取り掛かっている。
三人目の相手もまた、自分の情報を
ベラベラと喋っていた。
軽薄なのではなく、
サティの能力で喋らされているのだ。
「…あんたの部下。
どっちも普通じゃねえな」
「お褒めに預かり光栄だな」
山賊頭は苦い顔をする。
オズマットは面倒そうに正面に座りながら、
まるで雑談でも始めるように、
そう言えばと話を切り出した。
「さっきの術式だが、
あれって半分自己流だろう」
「…なぜそう思う」
「普通の土系統ならあそこまで錬成速度は
出ないだろう。特に学校で教えるような
術式なら尚更だ」
「学校なんざまともに通ったことねえよ。
そんな顔に見えるか?」
「確かに」
オズマットは苦笑する。
「あの速度は他の系統も混ぜた
混合術式だろう。
それにしては威力が大したもんで驚いたぜ。
普通混合術式は効果のわりに
威力が出にくいもんなんだがな」
「かすってもいないくせに、
どの口が言うんだ」
山賊頭が己が組み上げた術式を
遠目に眺める。
槍衾は未だにそのままの状態で
放置されている。
なんとも不思議な光景だ。
けれど、ある種の違和感を感じ、
ついオズマットへと質問してしまう。
「…おい、あれちょっと、
さっきより動いてねえか?」
「おお、流石に良いところに気がつくな。
それが俺の固有術式の本質だぜ」
「…おいおい、素直に肯定すんじゃねえよ」
「ま、バレちまっちゃしようがねえ。
ところでよ、バレたついでに
ちょっと色々と協力してくれねえかな」
山賊頭は面倒な奴に捕まったのだと、
この瞬間に悟った。
シルビアが昏睡していたのは
どのぐらいだったか、
再び目が覚めると、目隠しをされたまま
恐らく寝台と思しき場所に寝かせられていた。
「おはようさん。いや、こんばんは?
まあ、どっちでもいっか」
「…誰ですか」
「いや言えるわけないっしょ。
それより、質問に答えて欲しいんだけど?」
「先に水をいただけますか?
喉が乾いて仕方ありません」
「…何でそんなに落ち着いてんの?
まあ、良いけど……俺、水系統は得意だから、
変な抵抗はしないでよ」
シルビアは努めて冷静に
状況を分析する。
ここは、どこだ?




