SOS .034 宝銘
「《宝銘》……だと?」
フランドルの表情が険しくなる。
それもそのはず、この国で《宝銘》の
持つ意味は重い。
「お前、冗談にしても笑えないな」
『おや、冗談とは?』
相手の下手な道化っぷりに
フランドルは苛立った。
「《宝銘》がお前のような
三流武器商人の手下になるワケがない。
国が所有する最大戦力だぞ」
『それでも、意思を持つ個人です。
国に縛られ無いものだっていますよ~?
あとは、結構俗っぽい人も』
そんなことはフランドルだって知っていた。
今、この国が保有する《宝銘》は
全部で十三人。その内、所在不明は三名だ。
もちろん一般人は三名が所在不明など
知る由もない。
「ほう、ならお前が居場所を知っているとでも?
だとすれば大した情報だぞ。情報ギルドの連中に
売ればそれだけで一財産だろう」
『そんな勿体ないことしませんよ。
フランドル様はあの連中の嫌らしさを
知らないからそう言うんですよ』
フランドルは鼻を鳴らす。
その点は彼も同意だったからだ。
「じゃあ訊くが、
どの《宝銘》を手駒にしたんだ?」
『よくぞ聞いて下さいました』
サイエンがわざとらしく声を低くする。
『《無形》です』
フランドルは嫌悪に眉を顰める。
それは、この国が戦後に起こした
最大級の不祥事の原因となった存在だからだ。
一方、オズマットとサティは
追っ手がかかっているのを知りながら、
黙々と探索を続けていた。
「オズマット教務官」
「ん、どうした?」
「そう言えば、教務官って
《宝銘》持ちの御方と懇意にされているって
本当なんですか?」
サティがさも思い付いたように
オズマットに聞いてくる。
いつか聞こうとしていたのが
バレバレな態度だった。
「…やれやれ、昔馴染みの知り合いが
一人居るだけだよ」
「ほ、本当だったんですか?!
え、だ誰なんですか? どの御方ですか?」
「あー…そうだな、
詳しくは言えんが――《無形》のアルマ
では無いことだけは確かだな」
サティが文句を言う。
「当たり前じゃないですか。
あんな大量殺人鬼がもし生きていたら
今頃、国民全員が恐慌状態になりますよ」
オズマットが訂正する。
「誰も死体は確認していない。
死んだ保証は無いだろう」
サティがそれを否定する。
「でも、食料も水も無い状態で
あのポルタ砂漠で討伐されたんですよね。
死体は無くても
生存は不可能じゃないですか」
オズマットは壁を撫でた。
僅かに、振動が伝わってくる。
「……ま、一つ言えることはだな、
《宝銘》の連中は想像よりずっと怪物だ。
何が起きても不思議はないさ」
サティも探索を切り上げる。
ついに追っ手連中が索敵範囲に
侵入をしてきたのだ。
「来たか」




