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SOS .033 捕縛

「《略・強脚》」


 相手をするなど馬鹿らしいが、

逃げるのはもっと馬鹿らしい。


シルビアは二人の間を、強引に正面突破する。

 僅かな隙間を縫うように、

その身を翻して二人の視界を掠め抜く。


 こういう手合いは逃げる獲物を

追うことには慣れているが、

反撃は想定していない事が多い。


 思った通り、シルビアが振り返って逃げることを

想定していた急な動きに二人はたたらを踏む。


「《略・熱圏》」


 すり抜けたシルビアに背後から追いすがる

二人を牽制するために防壁を張る。


 僅かに躊躇させれば、

あとは全力で逃げ切るだけで話は終りだ。


 しかし、どういうわけか弱々しい膜壁が

シルビアの背後に現れる。


「え…?」


 思わず今の状況も忘れて、

シルビアは呆気に取られる。


 その一瞬の隙をついて、

シルビアは右手首を掴まれる。


「…っ!」

 

「ははっ! 捉えたぜ!」

「《睡霧(サモスネブラ)》」


 眠気をおこす花の香りが漂う。


 急激に目の前が霞んできた。


「どう…して?」


 足腰に力が入らない。

手にある神鉄如意は既に杖としてしか

機能していない。


「あそこの店は、店主の

故郷から仕入れた薫草が有名でな

どの料理にも必ず入っているのさ」


 右手首を掴む男が言う。


「そこに《水薬》を入れると

あら不思議。全身が弛緩していくわけ。

夢見心地ってやつ?」


「あんたら毒には敏感だが、

こういう薬には疎いだろう」


 こういうとは、つまり

飲めば気分の良くなるお薬のことだ。


 シルビア本人も気が付かない内に、

身体の緊張がゆるんでいたらしい。


 唇を噛むシルビアの意識はそこで途切れる。



「…ふう、可愛い顔しておっかねえなぁ」

「こっち殺る気で来てたら、ヤバかったな」

「いや、ホントマジそれな」


 雑談もそこそこに、

二人は用意していた大袋にシルビアを入れ、

台車に載せて路地を出た。


「けど、この子、正職員だろ? ヤバくね」

「つっても、俺らの上もヤバいから、

言われた通りにやるしかないだろ」

「いや、そうだけど、

カルマリの冒険者ギルドっつったら

あいつがいるじゃん」


 その言葉を聞いて、前を引く男の顔が青ざめる。


「その話はすんなよ。

縮み上がるだろうが」


 二人は知る由もないが、

その会話を始めから延々と聞いているものがいた。




「おい、お前」

『あ、はいはい? 何でしょうか?』


 盗聴に聞き入っていたのは

サイエンだった。

 向いに座るフランドルは不機嫌に

足を揺すっている。


「何かじゃ無いだろう。何かじゃ。

お前の言うとっておきとは何だ」


『ああ、はいはい。

武器紹介の件ですね。

フランドル様には、そうですね~、

《宝銘》とかいかがでしょうか?』


「……? はあ?」


 フランドルの眉間に大きな皺が寄る。


『いいですよ~《宝銘》

何せ魔獣の最強種でも単独討伐

しちゃうような連中ですしね。

いまなら何と3日間借りホーダイ

使いホーダイのお得なパッケージもございますんで!』



 


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