SOS .032 襲撃
シルビアは一人で帰る気だったが、
ご飯を奢って貰った手前、
すげなく帰るのもどうかと思い直した。
そこでとりあえず、先ほどの細工師の工房まで戻るのに
付き合ってもらうことにした。
決してそこまでの街車(街中を走る人を乗せる小さな台車)
の代金をケチったわけでは断じてない。
どうせ冒険者ギルド職員は
男女ともに一般的には不人気な職種だから、
そうと分かれば結果的に退散してくれるだろうと
シルビアは思ったからだ。
細工師の工房に寄ると告げると、
青年は二つ返事で了承した。
道すがら適当な世間話に相槌を打ちながら、
シルビアは考える。
シルビアの見立てではまだ大丈夫だと思うが
あの少年の目が覚める可能性は
充分理解していた。
ただ、ソアラは年頃の男に
モテるので、餌として一緒にしていれば
無駄に逃げ出すことは無いと予想を立てたのだ。
まあ、あれだ。所詮男は
可愛げがあって胸の大きい女が好みなのだよ。
「ど、どうしたんです?
険しい表情をして」
「いえ、別に?」
細工師の工房に到着する。
出迎えた見習いは、シルビアが男を
連れて来たことに絶句した。
「嬢ちゃん。流石だな。
今、仕上がったところだぜ」
工房主が神鉄如意を取ってくる。
「破損部分は廃棄した。
変換効率が落ちるからな。
その分、割引で調整してる。
まあ使ってみろ」
「それって、…何かの道具ですか?」
シルビアについてきた青年が聞く。
「あん? 固有武具だよ」
工房主の言葉を受け、
シルビアは勝手知ったる裏口へとまわる。
武具を試す為の、簡素な裏庭があるのだ。
見習いが慣れた手つきで的を用意する。
「《略・飛弾》」
間髪を入れずに、
シルビアは神鉄如意で的を穿つ。
的確に急所だけを狙った。
「すごく良いです。
ありがとうございます」
「毎度あり」
工房主と見習いが笑顔になるが、
青年は言葉を失っていた。
「今から冒険者ギルド支部に
顔を出すんですが、一緒に来ますか?」
「あー……遠慮しておきます」
青年はスゴスゴと退散する。
「何だ? 嬢ちゃん、あいつは誰だい?」
「ちょっとした知り合いです」
見習いはほっと胸をなで下ろした。
そのままの足で冒険者ギルド支部
へと向かうシルビア。
時間短縮のため、裏道を通って最短距離を進む。
しかし、シルビアはある種の違和感を
感じて立ち止まる。
「いい勘してるじゃん」
「ギルド職員ってのは本当らしいな」
二人の若者が側道から現れた。
見たことのない二人組だ。
「何でしょうか」
「いや、ちょっと俺らと付き合ってよ」
「飯でもどうだい?」
立ち振る舞いからして、
多少かじっている連中だった。
「いえ、さっき食べました」
「ああ、知ってるぜ」
返答もそこそこに、男達がシルビアに襲いかかって来る。




