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SOS .029 山賊

オズマットとサティは落とし穴を迂回して、

徐々に下へと降りていく。


 サティの的確な分析指示の元、

目的地と思われる泉までやってきた二人。


「これは…」


 いつも冷静沈着なサティも絶句する。


 そこには見たことの無い形の建造物が

無機質に横たわっていたからだ。

 大きさもさることながら、

その構造があまりにも現在の建物とかけ離れていることが

サティの動揺を隠し切れなくした。


「かつて見たことがありません。

聞いたことも。

……どこの国のものでしょうか」


「俺も見たことがないな。しかしまさかとは思うが、

これを召喚するためにあんな大掛かりな

術式を起動したのか?」


「そう、ですね…。

一見して珍しくはありますけれど、

そこまで価値があるとは思えません…」



 二人が真剣に捜索している間、

地上で《洞穴》の入り口で見張りをしている

ピースへと複数の足音が近づいていた。


「おや? 誰っすかね」


 その言葉に応じるように

茂みから男たちが顔を出した。


「はは、こんなに接近するまで気付けないとは

見張りとしちゃ、片手落ちだぜ」


 顔を隠した山賊風の男達だ。


「いまどき山賊って、

めちゃくちゃ時代遅れっすよ」


「うるせえ。邪魔するなら、

黙らせるだけだ」


 先頭にいる男の持つ大鉈は、妙な色味を帯びている。


「気になるか?

こいつは契約済みの愛刀さ。

銘は《毒華(ヴェノフロス)

文字通り触れれば死ぬぜ」


 ピースはゆっくりと立ち上がろうとした。


「おい待て、動くんじゃねえよ」


「けど、このまま睨めっこしてても

お互い楽しくないっしょ」


「いいんだよ、俺は楽しいからな


土縛鎖(テラネクトスタナ)》」


 次の瞬間、ピースの足元に土の鎖が

巻きつき始めた。


「……!」


「ははっ! 掛かったな!」


 男は術式を唱えた。

武器に頼る様を見せつけ、

手元に注意を向けさせる罠だ。


 とはいえ、捕縛系の術式は効果速度が遅い。

 それは術の効果が対象を攻撃するのではなく、

捕獲する事に目的があるからだ。


ピースは手持ちの武器で鎖を断ち切り、

身を翻して後ろへ跳ぶ。


「遅えよ!」


 男の背後に控えていたものたちが

ピースに襲い掛かる。


 その複数の凶刃を捌ききれず、

ピースの身体に鈍い刃渡りの山刀が突き刺さった。


「いっちょ上がりだな。

おめえら次は……」


「うわ、びっくりした。

死んじゃうところじゃないすか」


 山賊の頭らしき人物が固まる。


 先ほど倒したはずのピースが、次の瞬間には

寛いだ様子で近くの岩場に腰かけていたからだ。


 直接刺したはずの連中も、

自分たちが何も無い空間を突き刺していることに気が付く。


「……おまえ、何をした?」


「教えるわけないじゃんすか」


 ピースがおどけて笑う。


「でも、別に邪魔する気はないんで、

入りたかったらどうぞっす」


 そのまま《洞穴》の入口へと促すように手の平を向けた。


「喰えねえ野郎だな……

見たところ職員のようだが、

入っているのはお前の同僚だろ?」


「そうっすね」


 ピースがあっさりと吐く。


「……いいのか?

あっさり通してよ」


「いやいや、職員って言っても、

俺は冒険者ギルドの職員ですから。

自分の身は自分で守らないとね~?」


 ふん、と息を吐いた山賊の男は、

やや訝しりながらも、半ば納得する。


 ギルド職員の中で、冒険者ギルド職員は別名

『職員の皮を被った未開人』と言われることもある。


 基本的な職能が高くても、我がままで本能に忠実な人間が

少なからず生息する職場だからだ。


「んじゃ、ここでお別れだな」

「っすね」


 山賊の頭は他の全員を引き連れ、

ぞろぞろと《洞穴》に入っていく。


 ピースは何を思うでもなく、むしろ手を振って見送っていた。








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