SOS .026 会話
ソアラは必死になって
頭を使って会話を続けた。
一生懸命に言葉を尽くし、
相手の言葉に耳を傾ける。
シルビアがまだ帰ってこないことや、
予想よりも早く目が覚めたこと。
少年がどうしてすんなりここに戻ってきたのか、
ソアラの電撃を受けても無傷でけろりとしていることなど、
シルビアであれば突っ込みどころ満載の
状況にも気が付かないほど、
ソアラは頑張っていた。
「(もしかして、
あたしってこういう才能あるのかも?!)」
心の中で自画自賛するソアラに対して、
膳はなんだか申し訳ない気持ちになっていた。
実際はすぐ横でカンニングというか
リアルタイム翻訳をしてくれているからだった。
『(あー、今のは、
あなたの実年齢を聞いていますね。何歳ですか?』
「(えと、今年で16歳です…多分」
『なら、こう答えて下さい
「16」と』
背後なのか隣なのかわからないが、
ぼそぼそとカイケンの声で答えをカンニングする膳。
簡単に言えば、光学迷彩ステルス的なあれで
存在を見えなくしているらしい。
音声は指向性の音波を使い、
膳にだけ届く仕様になっているという。
この場にそぐわないハイテクさだ。
「せ、せでぃしえいむ?」
「ああ、16? 16歳なんですね!
あたしの一個下かぁ~」
無邪気に喜ぶソアラは大変可愛らしいが、
そろそろ膳の胃が痛くなってきた。
状況説明も無しに、この質問攻めはかなりきつい。
『それにしても、質問の順番がぐちゃぐちゃで
ちょっと返答に困りますね』
カイケンが居なければ、
未だに呼び方の自己紹介すら
まともに出来なかったことだろう。
そんなことは知らず
ソアラが上機嫌で今までの情報を纏めて読み上げる。
「えっと、つまりあなたは
《ニホン》という国の出身で
《オワーク・ダニ・ゼン》という名前なのね。
《ガクセイ》という職業で、見習い?
《マンション》というところに住んでいて
《16》歳と言うことね」
ノートのようなモノに筆記して
それを読み返すソアラ。
膳はその様子を見ながら、ソアラの
個人情報を心の中で反芻していた。
ソアラ・サングリッド。17歳。
冒険者ギルドの正職員で、
今は膳を保護する目的でこうして
情報収集に励んでいるらしい。
見目は健康的で明るい金髪と
見事なボディバランスが眩しい美少女だ。
《あんまりジロジロ見ると視線でバレますよ》
「いや見てナイですよ!」
「え?! ど、どうしたの?」
膳は首を振りながら手をばたつかせ
何でも無いアピールをする。
ソアラにカイケンは見えていないのだ。
身振りで通じたところを見ると、
こういうのは世界共通らしい。
「ああ、ごめんなさい。忘れてた。
寝起きだから水分とかとらないとね」
ソアラがゴソゴソとカバンを探り、
水筒のようなモノを取り出す。
思い切り間接キスだ。
『この子、職員の鑑ですね…
というか、貞操観念が緩い?』
カイケンがぼそりと呟いた。
こういう文化圏なのだと思ったが、
ソアラ自体があまり警戒心の
強いほうでは無いらしい。
後から聞いた話だと、
自分の口に入れるモノを相手に差し出すには
よほどの信頼関係がないと難しいという話だった。
もっとも、このときのソアラは膳を信頼していたわけ
ではなく、単純に保護対象の可哀想な少年
というフィルターで見ていたからに過ぎない。
ソアラとは反対にややどぎまぎしながら、
膳はその水筒を受け取って口をつける。
思っていた以上に喉は渇いていたらしく、
清涼感が身体を少し軽くしてくれた。




