SOS 244 占術
「……聞きたいこと、ですか」
「ええ、そもそも占い師とは相談役みたいな
ものですからね。
必要なものは客観性のある言葉と
それを使って本人が求めている助言をする能力です。
実際に真実かどうかなんて、あんまり
意味無いんですよねー」
トレイシーはあっけらかんと、はっちゃけた。
お茶うけを摘みながら説明する。
「そこに神導術でそれっぽい加工を
しているのが、いわゆる占術士というわけです。
こう見えて、占術士としては
マトモな部類ですよー、わたし」
ゼンは顎に手を当てる。トレイシーの
考えている事までは読み切れないが
敵対するような意思は微塵も感じられない。
「……おいくらですか」
「出血大サービスで初回無料。
今なら十回分の占いチケットを買うと、
オマケで一回無料券もご進呈しますよー?」
ゼンはその勧誘じみた言い回しに面食らう。
「ありゃ? こういう言い方が
分かりやすくてウケると思ったんですけどねー」
トレイシーは首を傾げながら、
どこまで本気か分からない様子で
ゼンを見つめた。
「ま、いいです。
一回だけタダで占いますよ。
但し、一個だけにしてくださいねー?
次は有料ですからー」
どうも調子の狂う言い方だが、ゼンは慎重に言葉を選んで質問をする。
どうあれ、トレイシーの《真眼》が本物であることは
ゼンにとっては自明の理であり、そこを疑う必要はなかったからだ。
それは直感などではなく、先ほど使用した《融合化》により
トレイシーの視点とこっそり《回線》を繋いだことで判明した事実である。
「……僕は、どうしてこの世界に来たのでしょう。
何か理由があれば、それを知りたいんです」
トレイシーはとりあえずといった感じで真面目そうな表情を作り、
真剣な表情でゼンの顔を見つめる。
適度な呪文やお祈りでもするのかと思いきや、普通に視ているだけだ。
「あー、そういうのはとっておきなので、
儀式的にいるっぽい時はやりますけど、普段面倒なのでしませんよー」
話してもいないのに、トレイシーはそう告げてくる。
そして、にやりと笑ってこう言った。
「まあ、初回ですし、軽く助言を差し上げましょう。
どうとらえるかは、ゼンくん自身でお考えください」
「え?」
その言葉に戸惑うゼンを余所に、トレイシーは続けた。
「異世界の住人については、実はゼンくん以前も
数えるほどですがこちらの世界に来ています。
分類は難しいですが、ゼンくんにわかりやすく言えば
転送者・転移者・転生者とかが多いですね。
ゼンくんは転生に近いですが、完全転生とは言い難いようです。
そして、理由は様々ですが、求められている役割はそのほとんどが同じです」
「それは……?」
「世界の《改変》です。《改革》《革命》と言ってもいいかもしれませんけど、
おおよそおんなじ意味でしょう。
それが意図したものと、していないものとありますが、
何者かの意志がそうさせたのです。
……残念ながら、それ以上は視えませんけどね」
ゼンの中で、ゆっくりと歯車がかみ合いだした瞬間だった。




