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SOS 242 決着

「(え?)」

「(何で?)」


 ファティマとペルシーがお互いの動きに

ぎょっとする。

 その無駄な意識も逃さず、シルビアは

二人を捕縛する。

 一瞬の隙を突かれ、二人は拘束される。

 重なりあってもつれ、地面へと倒れ込んだ。


「(しまった……!)」

「(でもこの程度、破れないほどじゃ――)」


 ファティマとペルシーは意識を振り絞る。

シルビアの拘束はお手本のような綺麗さだが

故に強力とまではいかない。


「《砲拳》」


 しかし、その瞬間、頭上からの死刑宣告が

二人に言い渡される。


 ソアラが異常なまでに練り上げた力を

余すことなく拳にのせた、その一撃が落ちてくる。


 防御など馬鹿馬鹿しいと思えるほど、

その威力は見た目で理解出来た。


「降参!」

「参りましたぁ!」


 ズゥン


 部屋全体が大きく波打つ。

戦術兵器でさえ耐えしのぐであろう破魔石の

敷き詰められた部屋は、まるで荒波に乗り出した

船の甲板のごとく揺らめいた。


 ソアラの拳はファティマとペルシーの間を抜け、

床を砕き、深く突き刺さっている。


その様を見て、二人は生きていることに安心した。


 パチパチと軽い音が部屋に響く。

観戦していたミラルダが歓喜の声を上げる。


「素晴らしい戦いでしたわ!

思っていた通り、いえ想像以上です!」


 仮面が張り付いたのかと思うぐらい、

絵に描いたようなにこやかな表情が嘘くさい。

 ミラルダはニコニコしながら四人の元へとやってきた。


 ファティマとペルシーはシルビアの拘束を解くと、

服装を正してミラルダへと頭を垂れる。

 何を感じていて何を考えているのかは想像するしかないが、

そこまで黒い感情を持っているわけではなさそうだった。


 あくまで試験は試験ということかもしれない。

シルビアは指輪が無事なことをこっそりと確認しながら

その様子を見ていた。


「ん? ソアラ? あなたもしかして……」


 シルビアがソアラに近づくと、ソアラはぱたりと倒れ込んだ。


「気絶してる……」


 最後の攻撃が外れたのは、情けでも気を利かせたのでもないらしい。

単純に、落ちただけだったようだ。


「……試合じゃなければこちらの勝ちだろうが」

「負けは負けですね。いい勉強になりました」


 ファティマとペルシーは素直に負けを認めて、

シルビアに頭を下げた。


「……どうも」


 シルビアはやや複雑そうな面持ちで、軽く会釈する。

勝ったような、それでいて負けたような気分だ。


「この度はわたくしの我儘にお付き合いいただき恐縮です。

ですが、これでわたくしの目利きが間違っていないと

はっきりと確信出来ましたわ。

本当にありがとうございます。

素晴らしいの一言です」


「……どうも」


 手の平で踊らされたような、すっきりしない感情がシルビアの頭を掠めた。


「お詫びと言っては何ですが、先ほどの手合わせて

装備がだいぶと傷んでしまわれたのではないですか?

是非、わたくしの目利きで一番上等なものをご用意させていただきますので

おめしかえ願えますでしょうか?」


 気絶したソアラがさっさと運ばれる。

まるで人質を取られたような気分で、

シルビアはその提案を飲むしかなくなった。


「(……まあ、悪いようにはならないさ)」

「(そうそう、割り切って付き合いなさいよ)」


 シルビアの耳元でファティマとペルシーが囁く。


 その切り替えの早さに、シルビアは難しそうな顔で聞く。


「……さっきの、手加減しましたか?」

「いいや? 全力だったよ」

「ええ、試験的には、全力だったわよ」


 喰えない二人だ、とシルビアは嘆息した。

そして同時に、ムキになって奥の手を晒してしまったことをやや後悔する。


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