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SOS 233 試金

 ソアラ・サングリッドは大貴族の令嬢だ。

実家は王都にはないが、それには理由がある。


 サングリッド家は代々、戦術ギルドで

実戦的な大役を担っており、指示系統の

兼ね合いで王都の外周部に四つの邸宅を

保有していた。

 その全てがソアラの実家である。


 彼らのように、実力でその威光を

示している貴族は、市民にも人気が高い。

 一方、実力ではなく家柄で地位につく貴族は

あまり人気が無いのが実情だ。


「ソアラ様は、どうして冒険者ギルドへ?

サングリッド家の方であれば、戦術ギルドが

放っておかないのでは?」


「あー、ちょっと理由があって……」


「あ、なるほど、わかりましたわ!

戦略的な事情というものですね」


 どんな事情よ? と思うが、シルビアは

黙ってそのやりとりを見守る。


 ベゲッド商会の一人娘、ミラルダ・ベゲッドは

無邪気な笑顔を振りまきながら、

ソアラに話しかけていた。


「それで、シルビア様も

同じ冒険者ギルドの職員の方なのですよね」


「ええ、まあそうです」


 様付けは止めて欲しいと言ったが、

ミラルダは止めてくれず、シルビアはもう諦めて

受け入れることにした。


「大丈夫なのですか?

冒険者には無法者が大変多いと

聞きますが……」


「私は技能と実戦、両方で採用されましたから。

そこいらの冒険者よりも腕は立ちます」


 シルビアは淡々と、しかしハッキリと告げた。


「なるほど! 文武両道なのですね!

素晴らしいですわ!」


 諸手を上げての賞賛に、

シルビアは気恥ずかしさを覚えた。


「……しかし、それでもわたくしは不安なのです。

いくらトレイシー様が

ゼン様の事を信頼されていても、

やはり心配なのです」


 雲行きが怪しくなってきた。


 シルビアはやや怪訝な表情、

一方のソアラは首を傾げている。


「ゼン様にお渡しした貸付金は

わたくしの個人資産の一部ではありますが、

それでもベゲッド商会の娘。失敗は

許されないのです」


 あの大金が個人資産の一部とは、

やはりベゲッド商会の名前は

伊達ではない。


「そこで、ゼン様の側近である

お二方の本当の実力を

わたくしに見せて頂けますでしょうか?」


 背後の扉から、二人の女性が現れる。

顔は知らないが、立ち振る舞いから

かなりの腕が見て取れる。


「ベゲッド商会専属護衛。

ファティマとペルシーです。

もしかすると、名前ぐらいはご存知かも

しれませんが」


 一人は長身で短髪の女性、

もう一人は中背で短髪だった。


「ファティマです」

「ペルシーです」


 隙が無い。礼儀も知っている。

恐らくベゲッド商会が懇意にしている

貴族家の傍流家系出身だろう。


「お手合わせ、お願い出来ますでしょうか?」


 ミラルダは無邪気な邪気を放っていた。

蛙の子は蛙。ベゲッド商会の名前は

やはりその通りの怪物を生んでいたらしい。


 ミラルダにとって、金は命だ。その命を

差し出したからには、相手の命を

奪う権利も発生する。


 ミラルダは至極当たり前に

そういう思考回路を持っていた。


 ソアラとシルビアは、覚悟を

決めるしか無くなった。

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