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SOS .022 再会

 ソアラは動揺した。


 シルビアに絶対目を離さないように

釘を刺されたにも関わらず、

結果として逃がしてしまったからだ。


 なお、混乱していたソアラは判断力が

著しく低下しており、地下通路の存在に気が付いていない。


 やばいやばいどうしようと呪文の様に唱えながら、

部屋の中をうろうろと練り歩く。


 時々発作を起こしたように

「にぎゃー!」と叫ぶのだが、

それでは何も解決はしなかった。


 もう少し冷静になっていれば、地下通路の件も

少し遠くで聞こえた何かが地面に叩きつけられるような鈍い音も

聞こえたのであろうが、ソアラには余裕が無かった。


 そこで、ソアラは妙案を思いつく。


 それはソアラ以外にとっては最悪な思いつきだったが。


「周りには誰もいない。てことは…」


 ソアラは山小屋の床に手の平をつける。

そして慎重に慎重に力を込めて言葉を紡ぐ。


「……《走雷(トニタロス)》」


 地面にいる相手を痺れさせる捕縛術の一種。


 普通はふらついたり、

座り込んだりする程度の影響しかないが、

ソアラは規格が違った。


 山頂付近が鳴動し、

その後大量の野生動物が一斉に逃げ出す。


 感電死していないことを願うが、

至近距離であればひとたまりもない威力だ。


 もちろん、それは敵か味方かなど問わない。


「こ、これで捕まえたはず…!」


 すでに冷静な判断を失っているソアラは、

血走った眼で表に出ると、周囲を見回した。


 周囲には累々と倒れ込んだ動物や、

木の上から落ちた小動物で溢れかえっている。

 そこで初めて


「…あ、しまった」


 と、ソアラは自覚した。


 青ざめるソアラだが、結果としては

幸いなことに目的の人物は無事だったようだ。


 ガサゴソと音がしたかと思うと、藪の向こうから

例の黒髪の少年が現れたのだ。


 ソアラを怯える目つきで見ており、

この惨状を作り出したのがソアラだと

分かっているようだった。


「よ、よか……

こ、怖くないよ~!

ほ、ほら。全然怖くないよ~!」


 少年はそれを信じたのか、

ゆっくりとソアラに向かって歩いてくる。


 ソアラはほっとして声を掛ける。


 多分、彼はここの大陸では無く、もしかしたら

亜大陸とか他の地域出身なのだろう。


 そう思いなおし、ソアラは知っている限りの

亜大陸表現での声かけをした。


『こんにちは。おはよう? あー、

はじめまして! わたし、ソアラ言います』


 気持ちが伝わったのか、

少年が声を出した。


「……コ、コンニチハ?」


 ソアラはそのことに嬉しくなった。


 少年はカタコトだが返事を返してくれたのだ。


「そう、そうです! こんにちは。

あたしソアラって言います。

冒険者ギルドカルマリ支部の正職員です。

あなたを保護させて下さい」


 ソアラの目はキラキラと輝ていた。


 少年はごくりと息を吞み慎重に歩き出す。


 先ほどカイケンに受けた緊急講座を

脳内で反芻しながら慎重に怯えた振りをする。


 曰わく、彼女の性格は素直で快活。

生まれと育ちもよく、見目も可愛らしい。

 健全な色気がある女の子だった。


 ただ、力の制御に多大な難点を抱えており、

誤爆で人命を失わなかったのは

神の奇跡とまで言っていた。


 要約すれば、殺傷圏内で気を抜かないよう、

とのことだった。


「ハ、ハジメ、マシテ」


 異世界共通のゆっくりしたお辞儀で

敵意の無いことを示す。


「はい、はじめまして。

さっきはすいません…えっと、

何故か寝具が壊れてしまって」


 目が泳いでいたが、

膳は全力で見ない振りをした。








 

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