SOS 214 避役
避役族とはいわゆるカメレオンだった。
しかも、姿形どころか、匂いも気配も
消すことが出来るらしい。
其処まで出来るのは避役族の中でも
とりわけ優秀な戦士だけだが、
今回の刺客は全員がそういう使い手だった。
目の前にいた避役族の男が目の前から消える。
その他の刺客も一斉にだ。
「《融和》」
白雪がゼンの代理権限で
術式を行使する。
「皆様、説明は後で。
早急に指輪を装着願います」
「《融合》」
続けて、白雪が術式を唱える。
「遅いわぃな!」
避役族の男の声がどこからか
聞こえてくる。
不可視の攻撃が迫る。
「《鋼織》」
ギィンと硬質な音が響く。
「なにぃ!?」
唱えたのは白雪だが、その術式は
ゼンとシルビア、ソアラとマリンにも
同時に展開される。
肌を上から保護する膜を作る術式だ。
避役族は二人で一人を同時に攻撃したが、
その膜に阻まれて凶刃は届かない。
普通の刃物では傷一つ
つけられないほどの硬度がその膜にはあった。
「マリン」
「は、はいっ!」
息つく暇を与えず、白雪はマリンに指示する。
戦闘勘だけで言えば、白雪をも凌駕する
マリンが先程の指輪の力を使う。
「なぁっ! ごぶぅ」
マリンを中心に周囲の全てが球体の
海水に沈む。その大きさは
ゆうに家を越える。
海人族のマリンはともかく、
他の種族では到底耐えきれない圧力に対して
ゼンを初め、白雪もシルビアもソアラも
一切苦しい素振りを見せなかった。
その海水と圧力に、完全適合しているようだ。
それは指輪とゼンの能力の効果だ。
避役族の男はもがきながらも、
活路を見いだそうとする。
「(まだ、俺たちの術式が破られた訳じゃない!)」
再び姿形を消す彼等。
「その技には欠点があります」
白雪は淡々と伝える。
「確かに、姿形だけではなく
存在感すら消失させるのは
脅威でしょう。
しかし―――」
メキ。と、水圧が上がる。
「ぐべぁ!」
「存在そのものを
消せるわけではありません。また――」
白雪が絹のような糸を紡ぐ。
「その術式を発動した際は、
他の術式を構築出来ないということです。
単純明快でございましょう?」
既に捕らわれた上で
気絶してしまった彼等に
その声は届いていなかった。




