SOS 212 指輪
「全くもう、散財ですよ! 散財!」
帰ってきたシルビアと白雪に
現状と惨状を伝えた。
ある程度余裕を持った予算を組んでいたが、
宿屋への弁償代金でその殆どが消えてしまう。
「馬車での宿泊に切り替えれば、
予算としては問題御座いません」
「そういうことじゃないのよ!」
白雪の言葉シルビアが噛み付く。
「というか! 一体何をやったら
あんな事になるのよ!」
ゼンはシルビアの圧力に押され、
またソアラは上手く説明が出来なかった。
そのため、水を向けられたマリンが
思い付いた言葉を口にする。
「(あんな綺麗な海水に浸ったのは)
初めてで
気持ちよかったです」
「……ああん?」
ピキ、とシルビアの眉間にヒビが入る。
「ちょっとマリンさん!?
言葉足らず過ぎやしませんか!?」
「全く……これだから男は……」
広くはない馬車の中で、シルビアは
ゆらりと立ち上がる。
まずいまずいと思い、ゼンは咄嗟に
例の指輪を出してくる。
シルビアの為に作った試作品だ。
「シルビアさんっ! これをどうぞ!」
「え?………ゆ、指輪!? 何を……」
シルビアに動揺が走る。
「シルビアさんの為に作りました」
「は? な? 何を……?」
赤面しながら焦るシルビア。
細工師は、結婚の申込みをする際に
自分で造った指輪を渡すという伝統があった。
細工工房に入り浸ることが
多いシルビアには馴染み深い習慣だ。
「ちょ、ま、は? いきなり、
こんなところで!?
せめて二人の時でしょう……!」
「いえ、効果を見ていただきたいので、
みんな一緒の時が良いかなって……」
「…………効果?」
「はい。シルビアさんの代わりの武器として、
どうかなって」
「…………武器」
シルビアの目が据わる。
ゼンは気付いていないが、
後ろで白雪が僅かに嘆息した。
「使い方は………」
ひとしきりの説明が終了したのち、
シルビアは起想と唱えた。
「え? シルビアさん? ここ馬車の中……」
「死になさいっ! この色情魔がぁ!」
馬車の後部座席が吹っ飛んだ。




