SOS 207 時代
「キタコレ、俺の時代!」
その密命を受け、ピースは有頂天となった。
ニヤニヤと笑う姿は周りから見て
非常に不気味であり、同僚の男性職員も
遠巻きに見ている。
とは言え、別に嫌われているわけでは無いので
同僚のひとりが何事かと聞いた。
「いやー、俺がゼン君の留守を
任されることになってね。
聞くところによるとゼン君の家って
可愛い使用人がめっちゃいるらしいじゃん?
一人二人ならまだしも
五人って。
俺、大丈夫かなー?
身体持つかなー?」
「よくわからんが、お前とそういう関係になると
決まったわけじゃないだろ?
むしろ、管理人と関係を持つのは
使用人としてどうなのよ」
真っ当な指摘にピースは「ちっち」と
舌を鳴らし否定する。
「禁断は恋の香辛料だぜ」
「馬鹿言ってないで仕事しろよ」
浮かれ調子のピースは仕事もそこそこに
早速ゼンの住まいへと向かう。
「おっ? 偶然だねぇ、お二人さん」
「あ、ピース先輩? どうも」
「珍しいですね、こんな時間にこんなところで」
ピースは仕事を抜けて帰宅する
シルビアとソアラに合流した。
もちろん、狙ってやったことだ。
ちなみにシルビアとソアラは
別の用事があって早めに帰宅する事になっていた。
「いやー、お二人さんには
先に話しておこうかなーと思って」
「?」
「?」
二人して疑問符を頭に浮かべる。
入職当時はそれほど仲の良くなかった
二人だが、最近はそうでもない。
自然に一緒に帰り、世間話をするぐらい
(シルビアに聞けば否定するだろうが)
周りから見れば仲が良くなっていた。
「実はねー……」
その話を聞いて、シルビアとソアラは
顔を見合わせた。
「おーここが俺の新居かー!
いい感じの佇まいじゃんすか。
……でも、全員で九人かー……、
ちと狭くなる? いや、それもありか」
「あー、見た目ほど狭くは無いですよ」
一人最高潮のピースだが、
シルビアとソアラは考え事を
しているので、扱いは雑だ。
「(んー? ちゃんと掃除をしてるってこと?)」
ピースはピースでそれどころではないので、
勝手な解釈で話を飲み込む。
「……まあ、ピース先輩に隠す意味はないか」
「え? 何のこと?」
「いいのよ、こっちの話」
シルビアはソアラをあしらいながら、
家の間取りを説明する。
ピースがこのままおとなしく帰るとは思えず、
諦めて玄関から案内に徹する事にした。
「先輩、こちらへ」
「はいはいっと」
すぐに説明が終わると思ったが、
ピースはその部屋数の多さに驚く。
「……えっと、部屋数多くない?」
「気付きましたか」
「いや、そりゃ気付くでしょうよ」
既に一階だけで、部屋数は十を超えていた。
「えっと、縮尺おかしくない?」
「ゼンの能力です。意味はわかりませんが
時空間を他の場所と繋げて、
内部構造だけを拡張したらしいですね」
「ふんふん………どういうこと?」
「だから、わかりませんって」
シルビアは諦めた声色で
ピースに不満を伝える。
もっとも拡張を実際に行ったのは白雪であるのだが、
ゼンの能力を使用したことを考えれば、
それは、最早ゼンの仕業と言って
差し支えないだろう。
「まいっか、住む部屋の心配はなさそうだし」
ピースがとても楽天的な発言をする。
「……あれ? 白雪さんが居ませんね?」
「ホントだ。買い物かなー? 白雪ちゃん」
「えっと、白雪さんって噂の美人給仕の?」
シルビアとソアラの反応に
ピースが食いつく。
白雪という美人給仕の噂は各所で
有名であった。
「いやー、楽しみだなー」
「(……何か妙ね)」
シルビアはふと、気になるものを
見つけた。
それは、今まで気付きもしなかった
壁の筋だった。
何故か今はそれが、隠し通路を閉じている
扉なのだとハッキリと理解出来た。




