SOS 205 入浴2
初めて白雪と一緒に入浴した際、
ゼンは理性が弾けそうになり
本気で死ぬかと思った。
もちろん、いかなことをしようとも
白雪はそれを受け入れてくれたであろうし、
そういうつもりで接していることは
ゼンも理解をしていた。
ただ、どうしても、
ゼンはそういうつもりにはなれなかった。
理由はいろいろあるものの、ゼンとして
その一線だけは越えることはしたくなかった。
とはいえ、健康優良児であるゼンの脳みそ以外は
そういうわけにはいかず、
白雪の初見殺しで死にかけたのは
記憶に新しい。
白雪も白雪で自分から手は出さず、
あくまでゼンの自由意志に
委ねるという姿勢は崩さないため、
全てはゼンの意思力にかかっている
といって過言ではなかった。
死ぬ気で耐えたゼンだが、
二日目は流石に無理だと悟り、
新しい能力活用方法にも目覚めた。
それは自身の《精神構造》を
別の物資に移し替えるという
言うまでも無く神業というべき新術だった。
(本人はそれどころではない)
ゼンが握りしめる黒い石は、
この世界で魔物を封じ込めるという
言い伝えのある石で、御影石のような黒さを放っていた。
特性としては力の吸収を
促進するもの(微量も微量)で
ゼンが細工師として工房に
出入りするようになってから
親方に貰ったものだった。
その黒石を調整し、
力の無限吸収が出来るように変質させ
かつその上で精神構造体の一部を
譲渡出来るようにした。
つまり、ゼンの脳内で発生する劣情とも言うべき
ピンク色の感情を、ごそっとまとめて抜きだし
その黒石に封じ込めることに成功したのだ。
「ご主人様、失礼致します」
白雪が手慣れた様子でゼンの元に向かう。
身体の汚れを一旦落とすための湯浴み専用の部屋から、
ゼンの奉仕をするためだけに作られた専用浴場へと
入ってくる。
もちろん、五人の娘たちも同じで
全員が生まれたままの姿となっていた。
それを振り返ること無く、
ゼンは最近発明した新術を発動させる。
「《無我》」
すると不思議なことに、
さっきまで渦巻いていた激烈な
欲情がごっそりと消え、
代わりに穏やかな気持ちに包まれる。
言うなれば、大自然で
野生の小動物と触れ合っているような
そんな心穏やかな感情であった。
「さあ、では皆さま思う存分ご奉仕くださいませ」
白雪は二コリと笑った。
白雪の提案した賭けとはつまり、ご主人様であるゼンが
何をしても決して手を出さないというものであり、
もしゼンが手を出したあかつきには、
この家の給仕長を譲るというものだった。
「……おー? いいんすか?
鬼、じゃなかった。白雪先輩。
あたしが給仕長になったら、もう偉そうなことさせないっすよ」
獣人族の少女が舌なめずりをする。
「……ふふ、それほど安い女ではないですが、
まあ、この際仕方ないでしょう。
美しさならこの中で一番の私が
ご主人様を虜にして差し上げましょうか」
どこにそんな自信があるのか、
大平原の小さな娘である地人族の少女が言う。
「いやー、悪いけど本気出したらうちら最強なんで」
「そうそう、悪いけど凄いからうちら」
こちらも根拠があるのか定かでは無いが
自信満々の光人族の双子。
「……………………」
一方、海人族の少女はまだ震えていた。




