SOS 201 提案
「ご主人様。一つ、お願いしても
よろしいでしょうか?」
「え? はい……何でしょうか?」
遡ること数時間前、
ゼンは朝食後に時間を作って欲しいと
白雪に言われて、その言葉通りに
自室で白雪を待っていた。
いつもの美しい笑みを崩さず、
白雪はゼンの自室を訪れる。
そこで、ゼンは先程の言葉を
言われたのだ。
「……これから、あの五人の使用人に
お目通りいただく前に、
お約束頂きたい事が御座います」
「は……はい」
白雪の神妙な顔つきに、
ゼンはゴクリと息を呑む。
「私の時と同じ様に《融合化》で
彼女達と回線を繋ぐおつもりでしょうが
その際、私にされた《完全融合化》は
決して行わないで頂きたいのです」
「……」
白雪はゼンの反応を待っている。
ゼンは、そのまま待つ白雪の内面が
ある程度なら推察が出来た。
それ以上を言わないのは、
白雪の覚悟の現れであり、
何一つ言い訳をしないという意思表示だ。
それは、たとえこの場で殺されようとも、
という意思だ。
そして、先の言葉の意味は、
「僕が危険に晒されるから……ですよね?」
ということであった。
「はい……大変差し出がましいことを
言いますが……」
「ごめんなさい。軽率でした」
「いえ、そんな、謝罪など!」
「いやいや、実は、シルビアさんにも
それを言ったらこっぴどく怒られましたし」
申し訳ない表情で頭をかくゼン。
「……でも、僕には他に、
渡せるものが無くって……
白雪さんを勝手に巻き込んだのは
僕の事情ですし……」
白雪も、ゼンの内面を推し量ることが
出来た。それゆえ、白雪はそれ以上
否定する事ができなくなった。
「……ご主人様。海人族の娘のこと
覚えていらっしゃいますか?」
「え?」
その為、白雪は話題を少し変える事にする。
「あーっと、その……
確か橋の上で戦った?」
「はい、その娘です。
私が彼女に敗北したときの事を
覚えておいででしょうか?」
その娘は強かった。一瞬の隙をつき
白雪を水中に引きずり込むと
完全に能力を無力化させたのだ。
結果的にはゼンの《融合化》の前に
なす術も無く倒れたが、
刺客の中でも随一の強者だと
白雪が認めていた程だった。
「それは……もちろん」
「実は……彼女に捕らわれた時に、
私は少しだけご主人様の能力の本質、その一部に
触れたのです。しかし……あまりに深すぎる
その力に怯え、その力を使うことを
躊躇ってしまいました。
その時に、僅かな隙が生まれ、私は負けたのです」
淡々と、しかし重く真剣に白雪は説明する。
「……ただ、あの力を欲するものも……
いいえ、恐らく彼女達はご主人様の力に触れれば
それだけであの力が欲しくなるはずです。
それほどに、ご主人様の能力は強大なのです」
「……わかりました。そうします」
白雪はほっと胸を撫で下ろす。
その上で別の提案をした。
「……では、提案なのですが、
こういうのは如何でしょう」




