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SOS .020 遭遇

 大涌谷膳(おおわくだに ぜん)は、何もわからないまま、

とにかく地下の通路に逃げ込んだ。


 服装は中学校指定のジャージで

濃紺に金色のストライプが入っている。


 靴は履いていないが、靴下だけでもあるのは

不幸中の幸いだった。


 むき出しの岩肌や湿った土が

ビシビシと足裏を刺激するが、

今は構っていられない。


 夢とは到底思えないリアルな土の感触は、

膳に本物の恐怖を与え始めている。


 必死に足を前に動かしながら、

記憶を探っていた。


 確か、自宅に居て…それから、何だったか。


 おぼろげに覚えているものの、

肝心な所で記憶が途絶える。


 多分、学校の卒業を間近にしていて、

いや、もう卒業したのか? どうだろう。

あまりはっきりと思い出せない。


 先程、起きてすぐに目に付いた女の子は

外国人のようで、金髪をしていたと思う。


 よくわからないが、

何か得体の知れない力で殺されそうになったことは

本能的に理解できた。


 ふいに昔に父親と見た、ミザリーという映画を思いだす。


 あれと大きく違うのは、その女の子はまあまあ…

いや、かなり可愛い女の子だったことだろうか。


 ほぼ暗闇に近い通路を抜けると、

そこは大自然の真っ只中だった。


 景色に詳しくない膳だが、果たしてここが本当に

日本なのかを疑ってしまった。


 見渡す限りの深緑。

遠くの稜線も、近くの沢も全て。

まるで現代感の欠片もない、

まっさらな自然を感じさせる風景だったからだ。


「ここ、どこだよ…」


 ふと、正面右奥に気配を感じる。


 野生動物だろうか。


 すると、図鑑で見たことのある狸のような

動物らしきものがのっそりと現れた。


「ひっ…!」


 膳は思わず口を抑える。


 それはそうだろう。

相手は乗用車ぐらいのサイズであり、

口からだらだらとよだれを垂らしているのだから。


 サイズ比較的に

乗用車といい勝負の狸は手負いらしく、

非常にのっそりと動くが、

膳はあまりの規格外のサイズに

腰から下ががくがくと震え、

思わず尻もちをついてしまう。


 それを見た狸は自然な動作で口を開き、

生きるための捕食を開始しようと――――


『ごめんなさいね』


 ふらりと妙な人影が闖入してきた。


 背丈は膳より小さく体つきも華奢だ。


 顔には何か被り物をしている。


 前身は真っ黒で肌の一部すら見えない。


『申し訳ないけど

この子には

手を出さないでもらえないかしら』


 狸は何も聞かず、

今度はその黒ずくめに牙を向けた。


 豚も丸呑みに出来そうなほど大きな口が開く。



 


 

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