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SOS 194 白雪12

 術者が死んだ。

 その術者は、ガーファングルでは

高名な術者であった。


 人格的にも尊敬される人物で

ガーファングル国内外で彼の弟子を

名乗るものも多くいる。


 そんな彼が死んだ。それも、

ただ死んだわけではない。


 呪詛の呪い返しを受け、

もはや原型を留めないほどに

ぐちゃぐちゃになって死んだのだ。

 しかも、真実恐ろしいのは

死ぬまでの過程だった。


 術者は呪詛返しを受け、

即死しなかった。いや、正確には

即死することが出来なかった。


 潰れた蛙よりも酷い嗚咽を

吐き続けながらも、まるで粘土細工のような

姿形になっても術者は死ななかった。


 呪詛を送りつけた本人が

生かさず殺さずの状態で

術者を縛り付けたからだ。


 術者はガーファングルの聖女が看取るまで、

生きながら死に続けた。


 聖女はその様子を振り返り、

それを《悪魔の所業》であると

強い言葉で非難した。


 教会が退魔師の養成を強化する事になったのは

その聖女の言葉が始まりでもあった。




 一方、ウルメリアの副都カルマリでは、

その訃報を聞いた情報屋が青ざめていた。


 有名人が死んだからではない。

その術者は、表の世界では高名な治癒術士

の大家として名を馳せていたが、

裏の世界では隷縛術士連中の元締めとして

大きな影響力を持った存在だった。


 どういう術式が使われたのかは

わからない。いや、どんなものだろうと

その術者本人を直接害することなど

誰も出来る筈が無かった。


 権力もさることながら

彼は、弟子を使って隷属化の術式である

隷縛術を研究していたのだ。

 本人が自ら隷属化させることなど

あるはずが無かった。

 呪詛返しをしようとも、

彼に届く術など無い。


 にも関わらず、呪詛は彼に跳ね返った。


 決して表に出ることがない彼に

その怨念の刃は突き刺さったのだ。


 カランカランと、入り口の扉が鳴る。

入ってきたのは、蒼い髪が珍しい少女だった。


 情報屋は普段の癖で、見慣れない存在を

つぶさに観察する。

 直接目線は向けずに、全体的な動きを見る。


 すると、その少女は真っ直ぐ情報屋へと

進んできた。


 自分の観察行動がバレたのかと思い、

情報屋は思わず身を固くする。


「どうも、お久しぶりですね」

「……え?」


 仕事柄、他人の顔を覚えるのは

普段からいつも行っていた。

 にも関わらず、情報屋はその少女に

見覚えが全く無かった。


 ……いや、全くというわけではない。

髪の毛の色と目の色が違うが、

見覚えは確かにあった。


「……あの時の、蜘蛛女?」

「酷い言われようですね」


 深緑の瞳が美しい少女は

苦笑した。

 しかし、そこに至ってもなお

情報屋の中で彼女の存在が合致しない。


「今日は、言伝があって参りました」

「なに……?」


 情報屋は混乱する。

普通に考えて有り得ないことの

連続だったからだ。


「私は自由を与えられました。

その自由はご主人様に捧げます。

あなたの国とはこれっきりと言うことで

宜しくお願い申し上げます」

「…………は?」


 コイツは何を言っている?

情報屋は周りの警戒も忘れて、

その表情をまじまじと見る。


 本気だ。虚勢や冗談ではない。


「何を、馬鹿な。

尊き国を相手に?

……ほ、本気か?」


 彼女は呆れた声を出す。


「象が蟻を敬えと?

馬鹿はどっちですか?

……それと、私の名前は白雪(シラユキ)です。

以後、お間違い無きよう、

宜しくお伝え下さいませ」


 白雪は笑顔で首を垂れた。

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