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SOS 193 白雪11

 ゼンはその手を取った。女の子の手は

真っ黒で硬質な体毛に覆われている。

 昔に触ったことのある感触だ。


 どういう背景かは思い出せないが、

何かの博物館で触れたことのある、

大きな蜘蛛の背中にそれは似ていた。


 まず始めに気付いたのは

彼女にかけられた隷属化の術式だ。

 この世界には隷属化の術式が数多く

存在している。

 もちろん、ゼンはそんなことは知らないが

今、触れている目の前の術式については

その全てを理解出来た。


 腹立ち紛れにその術式を無効化する。

同時に、というか無意識的に、

その術式をかけた本人に

逆送させる。

 いわゆる呪い返しというやつだ。


 ふと、ゼンは、融合化で彼女の中にある

『紅女郎』の遺伝子情報に触れる。

 そこで解ったのは、彼女はその因子を

受け入れている訳ではなく、

むしろ抵抗し続けているという事実だ。


 彼女は因子に含まれている

『紅女郎』の能力の半分を取り込んでいた。

 しかし、残りの半分については、

無意識的に抵抗しており、結果

腕だけが魔獣化するという半端な

合成となったわけだ。


 ある意味、魔獣の因子に抵抗

し続けているだけでも、彼女は特異で

希有な存在だと言えたが、

それにより力が制限されているのも事実だった。


 そこで、ゼンは施術する。

『紅女郎』の因子を先ほど解析した術式を元に

強制的に隷属化し彼女の支配下に置く。

 彼女が眠ろうと、気を失おうと

弱体化しようとも、

決して逆転することのない格付けだ。


 王と貴族の関係ではない。

それは差し詰め、神と人間の関係に近い。


 瞬間、シロの身体に変化が訪れる。

透き通るような肌はそのままに

髪は晴天のごとき蒼さへ。

そして瞳は深緑の色へ。

また、その手は美しい少女のそれへと変貌した。


 呆気に取られる三人をよそに、ゼンは更に

施しをする。

 それはゼンと彼女を繋ぐ回線の構築だった。

 しかも、主従関係ではない、あくまでも

完全に対等な関係での回路構築であった。


 言うなれば、彼女がその気になれば、

ゼンの能力全てを奪う事が出来るほどの

普通に考えれば有り得ない権限の付与を行った。


 この日から、彼女ことシロは

ゼンの仲間となった。

 それはゼンと彼女が心から望んでいた

モノだった。


「……僕は膳と言います。

お名前、聞いても良いですか?」

「……シ、シロとお呼び下さいませ」


 それを聞いてゼンはしかめっ面になる。

何故ならそれは記号であって、

名前では無い筈だったからだ。


「……うーん、じゃあ

もっといい名前を考えましょうか」

 ゼンは自分の行った神の如き所業も

気にとめず、シロに笑顔で向き合った。

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