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SOS 192 白雪10

「……それで、言われるまま

刺客を手籠めにしたわけですか」

「いや、してな――」

「黙りなさい」


 右手と左手に鋏を持ったシルビアが

ジャキジャキと鋏を鳴らしながら

正座しているゼンを睨みつけた。


 ソアラはその様子を見ながら

オロオロしている。

 シロはシルビアとソアラには

無頓着で、ゼンの動向を窺っている。


 感情面では落ち着いたようだが、

何を考えているかはわからない。


 シルビアは盛大な溜め息をついて、

今までの話を要約した。


「つまり、あのサイエンとかいう

胡散臭い連中の甘言を真に受けて、

刺客を自分のモノにしようと

したわけですね?」

「えーと、まあ、そうなりま――」

「馬鹿じゃないですか?」


 ゼンはシルビアにピシャリと両断される。


「他国からの刺客なんて

明らかに紐付きじゃないですか。

そんな連中を囲っても、

次から次に刺客が来るだけですし、

どれだけ囲っても、仲間に

なるわけじゃないですよ。

いずれ寝首をかかれますよ?

国に保護を求める方がよっぽど

合理的です」


 まあ、正論だ。とはゼンも

思わない訳では無い。


「まあまあ、シルビアちゃん。

落ち着いて」


 ソアラが宥めにかかるが、

シルビアはギロリとソアラを睨みつける。


「ソアラ、あなたはこのゼンが

どれほど甘いかわかってません。

こんなのと一緒に暮らすなんて、

私達の命も危なくなりますよ」


 とはいえ、その刺客に一杯喰わされたのは

シルビアとソアラだったのだが、

あの時、既に出来上がっていた二人は

シロの存在を覚えていなかった。


 シルビアの言葉に、ソアラは反論出来ず、

その場は静寂に包まれた。


「……発言させていただいても、宜しいでしょうか」


 シロが初めて口を開いたのは、

その時だ。


「……何かしら?」


 シロは面を上げず、床を見ながら首を垂れて

発言した。そのまま、両手の平を上に向けて

前に出し、服従の格好を示す。


 両手は肘の先から真っ黒であり、

それは手袋の類ではなく、

まるで蜘蛛の脚のような歪な

異質感にくるまれている。


「……私には、もう歯向かう気持ちなど

微塵も御座いません。

ですが、仰いますとおり

私は国の紐付きです。

ご面倒かと思いますので、

自害せよと仰っていただければ、

直ぐにでもこの場で自害致します」


 潔い、というよりも

諦めや達観に近い言葉だった。


 その言葉の本気度合いを感じ、

シルビアとソアラは戸惑う。


 彼女達もこの世界の住人だが、

世界の闇深さを全て知っている訳では無いのだ。

 そこでしか生きられない存在の

考えることなど、解るはずも無かった。


 しかし、ある意味究極の他人であるゼンは

シロの発言を聞いて、感情がざわめいた。

 融合化したことで、シロの生い立ちに触れ

彼女をこんな風にした連中に対して、

ある種の反発が目覚めたのだ。


 サイエンの言葉を真に受けた訳では

もちろん無いが、このままこの女の子を

見捨てるのは大いに腹が立った。


「……それは、おかしいでしょう」

「……!」


 ゼンの言葉に含まれた怒気を感じ、

シロが首を垂れたまま、ビクリと肩を震わす。


「自分勝手にしておいて、

こんな終わらせ方、あんまりじゃないですか」

「……だったらどうするって言うのよ。

この子を救う為に、国を相手に闘うっていうの?」


 シルビアの言葉は正論だった。

しかし、納得は出来ない。

 ゼンは自分の中の何がそんなに

反発しているのかわからない。


 けれど、それはあんまりだと思った。

許せないと思った。


「……なら、生まれ変わればいいじゃないですか」

「……ゼン? 何を言って――」


 ゼンは込み上げる怒りのまま、

力を込める。


 ゼンの両手に光が宿る。

強く暖かい大いなる光だ。


「ゼン?! あなた何を――!」


 そのまま、ゼンはシロの手を取る。

 シロは驚きながら、思わず

ゼンの目を見つめてしまう。


 ゼンはシロを見ていた。

その目は、焼き尽くように真剣で

でもそれ以上に、溺れてしまいそうなほど

悲しい目をしていた。


 それが自分に向けられた慈愛の感情だと

シロが知るのは、もう少し後の話だった。


「《融合化》」

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