SOS 186 家路
「酷い目に遭ったわ……」
「あー、サティ先輩って酒乱なんだねー」
給仕をさせられた挙げ句、酒も呑まされた
シルビアとソアラは疲れた顔で家路につく。
二人とも弱いという訳では無いが、
サティの酒気に当てられて
足取りが怪しい。
ちなみにお店からは「ジルスチュアートお嬢様のお相手を
お願い出来て助かりました。是非次回も
一緒にお越し下さい」と満面の笑みで言われた。
「サティ先輩、あの界隈で
要注意人物扱いじゃないの?」
「さすがにそこまでは……無いと思いたいけど」
シルビアとソアラが珍しく仲良さげに会話する。
酒が入った事で、気が緩んでいるらしい。
いつもの微妙な距離感が無い。
後ろをついてくるゼンの異変にも
気がつかない様子で、二人は歩く。
ちょうど店から家路の中間地点あたりに
差し掛かった頃、ゼンがへなへなとへたり込んだ。
「……え?」
「ちょっと……!」
知らないうちにゼンも呑まされていたらしく
慣れない酒が回り、歩いて居られなくなったようだ。
しまったと思いながら考えを巡らせる二人に、
一つの影が近付いて来る。
「お嬢様方ー、お待ち下さいー」
それは、先ほどの店の執事服を着た
従業員と思われる女の子だった。
「えっと……さっきの店のー?」
「はい、レミーと申します」
真っ白な髪と真っ赤な瞳が印象的な
美形の執事だ。酒の入っているシルビアとソアラは
見覚えの無い彼女に対して、特に警戒感も
抱かずに会釈をする。
「申し訳御座いません。此方の手鏡を
お忘れではございませんか?」
彼女が追ってきた理由はそれだったらしい。
しかし、二人ともその手鏡に記憶が無く、
またサティの持ち物でも見た事がなかった。
「違う……と、思いますけれど」
「そうですね、知らないです……」
「そうでしたか、失礼いたしました……
あの、お連れ様、いかがされたのですか?
随分と顔色が優れないようですが……」
ゼンはほぼ気絶に近い状態で
ぐったりしていた。
酩酊では無いだろうが、起こすのも
難しい感じだった。
「あー、お酒に当てられたみたいで、
大丈夫ですよ。二人で運ぶので」
「そうです、そうです、
……うわわっ!」
ゼンを担ごうとするも、上手く行かず
三人でよろける。
それを見かねたレミーは「失礼します」と言って
ゼンを軽々と抱え上げた。
俗に言う、お姫様だっこというやつだ。
「一緒にお送りします。
こう見えて、腕力には自信があるのですよ?」
強がりでは無さそうだった。
「いや、でも……送迎代はちょっと」
セコいシルビアの一言を、
レミーは笑顔で一蹴する。
「いえいえ、もちろんお代など
頂きませんよ。
宜しければ、またお越し下さいませ」
にこやかに軽やかに、レミーは
ゼンを運んでくれた。
もちろん、三人の住む家までしっかりと。




