SOS 184 歓迎会
結局、その日ピースは出勤せず、
店の相談はサティにすることにした。
サティであれば、それほど高級な店を
提案することもないだろうと思い
深く考えずに二人は相談をしたのだが
これが大きな誤算となった。
相談した途端に目を輝かせたサティが
「行ってみたかったお店があるのよっ!」と
息まいたのだ。
聞くと、先の事件で被害を受け、
半壊や全壊となったなじみの店が集まり、
再起をかけているという。
サティもなじみの客として
応援をしたいらしい。
ここまでは良かった。
「今なら四人で行けば、
割安になる券も持ってるから。行きましょう!
しかも、今日だったら2割も安くなるのよ?
2割よ? 2割! 凄くない!?」
お得な話に目が無いサティは、
歓迎される本人の都合や状況も
お構いなしに予約までずんずん突き進んでいった。
本当は日程や内容を練って行うはずが、
急遽集められたような面子で、突貫工事のような
歓迎会が催されることとなってしまう。
「……ごめんなさい、ゼンくん」
「いまから、あなたの歓迎会が始まります」
「……え?」
「しかも……」
「……場所が執事専門店です」
「……えー……え?」
二重の意味で言っている意味が
よくわからなかった。
ゼンは不承不承のまま、二人に連行される
ようにして歓迎会場に連れて行かれた。
三人が来るより早く
サティは満面の笑みを浮かべ、
執事専門店で寛いでいた。
店の店員は男装した女性達で、
色んな意味で安全が担保されていることもあり
女性客に人気の店という形態をしていた。
ほぼ全員が元戦闘職であり、
用心棒としても頼りになるのだ。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
シルビアとサティ、そしてゼンが
出迎えてくれた壮年の女性執事に
恭しくお辞儀される。
「え? あ、はい」
シルビアは動揺混じりに答える。
「はい、ありがとうございます」
ソアラは普通に答える。
そして、ゼンはうろたえながら
反射的にお辞儀をしたが、
眼光鋭い女性執事は、ゼンにだけ
持ち物を確認させて欲しいと言う。
「ジルスチュアートお嬢様のご紹介と
伺っておりますゆえ、
余程の事は無いかと思いますが、
これも決まり事で御座いますので」
丁寧な所作だが、有無を言わせない
圧力を感じる。
ゼンはこくこくと頷き、
されるがままに検分された。
「……ありがとうございます。
お手数をお掛けしました。
さあ、どうぞ。ごゆっくりとお寛ぎ下さい」
店は所々補修した跡が見えたが、
概ね綺麗に整っていた。
華やかな活気があり、爽やかな
色気のようなものが漂っている。
「……初めて来ましたけど、
なかなか良い雰囲気ですね」
「うん、所作も完璧で凄いね。
実家の執事さんみたい」
二人は感想を言い合う。
最初はどうなるかと思ったが、
意外に良い提案だったと
一安心する二人。
「遅いよー! みんなー!
もうー! 罰として全員執事になって
あたしをチヤホヤすることー!」
けれど、既に酒が入り結構出来上がって
しまっているサティを見て、
人選に失敗した事を悟る。
そして、実際にその提案は
有言実行されてしまい、
ゼンの歓迎会にも関わらず、
シルビアとソアラ、ゼンの三人は
執事姿でサティことジルスチュアートお嬢様に
給仕する羽目になったのだ。




