SOS 178 共同生活
「……おはようございます」
「え、あ、オハヨウ……ゴザイマス」
辿々しい発音でゼンはシルビアに
朝の挨拶をする。
早めに起きて勉強をしているゼンだが、
シルビアはいつもこの位の時間に
起きてくる。
感覚的には就業の三時間ほど前であり
大分と早起きになる時間帯だ。
「ちゃんと勉強しているみたいですね……
偉いじゃないですか」
「あ、アリガトウ……ゴザイマス」
どうやら誉められたことは
何となく分かったので、
ゼンはお礼を言う。
シルビアはそれを聞いて会釈だけすると、
さっさと食事の準備に入る。
ゼンはそれを手伝わない。
それが共同生活に置ける大切な規則
だったからだ。
数日前、突然この国の宰相とかいう
偉そうな老人に呼び出されて、
ゼンはシルビアとソアラ二人と一緒に
共同生活をする羽目になった。
ゼンの出自については不問する
という条件を付けて、世話役として
冒険者ギルドの二人があてがわれるという。
その際は、ベントリ、グレースとだけ
《融合化》による真言のやり取りを行い、
状況の把握に努めた。
ガーファングルは元々軍国主義の多種族国家で
公用語は定まっているものの
地方言語も多い。
そのためガーファングル出身のグレースが
おぼろげながらも通訳をする(という体裁)で
その関門を突破した。
「混じっているとはいえ
王族に使用人を付けない訳にはいかないだろう」
というのが宰相マックスの言葉だった。
その直後、シルビアとソアラが
ゼンの使用人に任命された。
二人ともが困惑した表情でその指示を飲み込んだ。
共同生活初日、
「初めに言っておきます」
「え? はい!?」
「へ?」
荷物をほどき終えたシルビアは
二人に宣言した。
「共同生活に当たり、まずは規則を
作りましょう」
「え……あ、はい」
ゼンは素直に頷く。
今は真言でシルビアの言葉の意味は
過不足無く伝わっていた。
「えっと……あたしたち
使用人だから、そういうのはゼンくんが
決めるんじゃないの?」
ソアラが珍しくまともな反論をした。
シルビアはそれを鬼の形相で睨む。
「うひっ!」
「……体裁的にはそうですね、
ただ実際は異なります。
あくまでも対外的にはそれで行きますが
家の中では対等のハズです」
「な、なるほど……」
「……もしかして、王族権限で
私達に変な格好をさせたり、
変な命令をしたり、辱めたり、
あまつさえ純潔を奪ったり、
好き勝手出来ると思っていたんじゃないですか?!」
「いや! 思ってませんよ!」
「(むしろ……シルビアちゃんが
そんなコトばっかり考えてたんじゃ……?)」
正解するソアラをよそに、
シルビアとゼンの間で取り決めがなされた。




