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SOS 179 白雪2

 その少女は名をシロといった。

無機質なその名は本名でも愛称でも無い。


 家は家と呼ばれ、本は本といわれる。

つまりシロはシロであり、それはただの呼称だ。


 シロは大きな帽子を頭に乗せ、

大きな外套を羽織っている。

 体の線をすべて覆い隠すほどに

その外套は大きい。

 

 ガーファングルの北限近くから

呼び出されたシロは

そのまま真っ直ぐにカルマリへと向かった。


 寄り道をする事もなく、

ひたすら移動を続け、シロは

数日かけてその道のりを踏破する。


 強行軍もかくやという速さだ。


 休む間もなく、シロは情報屋の元へと向かう。

カルマリの中でもガーファングルは根を張っており、

一般人に紛れて彼等は暮らしている。


 訪れた飲食店はそこそこ繁盛している

大衆店で、値段も安めだった。

 目的の情報屋を見つけると、

シロは声をかける。

 内容はたわいもない世間話だが、

特有の符丁が散らされていた。


 その一言で情報屋はシロの正体に気付く。


 シロは必要な情報紙片を仕入れると、

そのまま店を後にした。


 残された情報屋はそのままカルマリの

日常風景へと戻っていく。



 このまま対象に仕掛けることも

不可能ではないが、

情報の読み込みと整理を

行うためシロは宿をとることにした。


 身体を湯浴みするため、

桶に張った水を温めてもらう。

 北国出身のシロであれば

たとえ水でも問題無いが

あまりに突飛な行動はまずかった。


 郷に入らば郷に従うのも

目立たない基本だ。


 簡素な夕食を済ませ、

シロは情報に目を通す。


 さすがに盗賊を無遠慮に殺すのとは

訳が違う。純粋血統ではないとはいえ

王族を殺すのだ。

 それなりの準備は不可欠だろう。


 シロは情報に目を通し、理解すると

その情報紙片を燃やす。

 証拠を消すのもまた当然の措置だ。


「……今は使用人と三人で暮らしている。

使用人の名前はシルビアとソアラ。

冒険者ギルド所属の新人……」


 シロは情報を反芻して繰り返し飲み込む。

同時に、手段を考えてる。

 それは最短最速での暗殺手順だ。


 もちろん、シロに全ての情報は教えられ無い。

余計な情報を与えれば、それが流出する危険を

孕んでいるからだ。

 だからシロは与えられた情報で

可能な限りの想定を行う。

 賢くなくても、考えることは出来た。

それが、それだけがシロに許された

唯一の自由だったから。


「……もう少し、情報が欲しい……」


 シロは既に暗くなっていく街へ出る。

その目に迷いは無い。

 もちろん、喜びなど

有るはずも無かった。

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