SOS 175 強制
『……完敗だねー』
カルマリ郊外のひっそりとした森の中、
サイエンはポツリと呟いた。
周りは木々と林が乱立しており
磁気も若干狂っている。
普通に考えて待ち合わせには不向きな
場所だが、サイエンは待ち人を待っていた。
『勝つつもりだったんですか?』
そこへカイケンがふらりと現れる。
前触れなく、ゆるりと姿を見せる。
『少しはね』
『ふーん』
距離を置いて近場の岩に腰掛ける。
そのカイケンとサイエンの微妙な距離感は
そのまま二人の心の距離感と似ていた。
『キチョウは?』
『ここに』
キチョウが現れる。
カイケンと同じく静かに、しかしその所作は
洗練されていた。
嫌みすら感じないほど仕上がっている。
『やはり、若様の予言通りでしたね。
リッテンハイムもアーセルハイムも
同時に逝去しました』
『……あの魔獣が来なければ……』
『でも来た。本来の歴史にはない行動』
『バタフライ効果……でしたか?』
『細かい意味合いが違うけど、
多分そういうことよね。
……若様の予言通り……』
サイエンが珍しく寡黙になった。
落ち込んでいるのか口数が少ない。
もちろん励ますような関係ではないが、
気にならないといえば嘘になる。
『で、これからどうするの?』
『もちろん戦いますよ?
若様の為に』
サイエンはブレない。
ヤケになっているわけではなく
だからといって平常でも無さそうだが、
その言葉は強く真っ直ぐだった。
『カイケンは?
ってまあ、決まってるでしょうけど』
『ゼンくんのフォローに入りますよ』
『愛しのダーリンの為に?』
『……その単語、何かムカつきます』
『あっそう? てゆーか、両想い何でしょう?
さっさとくっつきなさいよ』
『うるさいですね』
カイケンは心底嫌そうな声を出す。
『キチョウは?』
『もちろん、世界平和の為には
立ち止まって居られませんよ』
『……あー、そうね』
さしものサイエンも呆れた声を上げる。
そしてしばらく、無言の時間が過ぎる。
『……ふう、それで?
こんな四方山話をしたかったわけ
じゃないでしょう?
何が目的なんです?』
カイケンが痺れを切らせて
発言する。
怒っているというよりも
苛立っている感じだ。
『アプローチを変えようと
思ってね』
『あぷ……?』
『それはどういう……?』
二人が疑問を口にする。
『直接、ゼンくんに
お願いしてみようと思います』
『『??』』
『《強制転移》』




