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SOS 173 偉業

 カルマリは先の祝賀から

一変して、悲しみに包まれる。


 各地からやってきた魔獣率いる獣の群れは

カルマリ領内を蹂躙した。

 しかし、現国王と王弟は、その身を賭して

国民の命を守ったのだ。


 国民はその偉業を聞いて、あるものは泣き、

あるものは怒った。またあるものは悲しみ、

あるものはただただ感謝をした。


 全ての民の父である王に、全ての民が敬服する。



「……恐ろしい爺さんだな」

「ええ、怖い人です」


 全ての民が王の為に喪に服した。

 そうして黒一色に染められた街は、

悲しみを滲ませていたが、

それだけでは無かった。


 王の献身をむしろ

誇っているようにさえ思える空気が漂っていた。

 さしずめ誇り高き王の凱旋であった。


 領城の窓から、冒険者ギルド所属の

オズマットとベントリが話す。

 爺さんとは宰相マックスのことだ。


 マックスは王族二人が死亡した事実を

聞くと、すぐさま筋書きを

組み立て直し、国民への説明をした。


 王はこのカルマリの臣民を守るため、

自ら犠牲となり、宝剣の力を解放したのだと。

 その力と引き換えに、

国を、いや臣民全てを守ったのだと。


「――陛下は仰られました。

『民あっての国である。

ならば、民を置いて逃げる訳には行かない。

いや、民を守らずして、何が王か。

王たるものは、守るべきを知っている。

その意味をここに示そうではないか。

心配はいらない。

王は常に民とともに』……と」


 人々は歓喜に沸く。

いや、感涙か。

 王の名前を叫び、称える。

 感極まったマックスは、

壇上で咽び泣く。


 それを見た人々はさらに国の名を

連呼した。


「……おいおい、戦いの最中に余裕過ぎるだろ?」

「そういうことは言わないで下さいよ」

「そうっすよ。ああいうのは風情が大事でしょ?」


 オズマットとベントリの掛け合いに、

ピースが口を挟む。


「おお、ピースか。

どうなりそうだ?」

「どうもこうも、

結構無理筋な注文ですよ?

実際のところ。

ガーファングルにも借り作っちゃいますし」

「見かけによらず真面目だな、

おまえさんは」


 オズマットは笑う。

 マックスの案で、ゼンはガーファングルでの

共同戦線を敷いた際、先王とガーファングル貴族の

間で生まれた二男という設定になった。


 すでに鬼籍に入っている貴族家の女で

設定上無理のない年齢、かつ

金銭を必要としている貴族家に

その役回りを打診したのだ。


 ピースは意外と上手く立ち回ったようで、

約束と一筆まで頂戴したらしい。


「ご苦労さん、とりあえず休んでくれ」

「そうさせて貰います」


 ピースを見送り、

オズマットとベントリは

お互いに見合う。


「……次王はデュッセルハイム様でしょうか?」

「おそらく、特例で

選挙を経ずに選定されるだろうな。

ただ、年齢がな……

王位は25歳以上でないと

引き継げない。

あと十年近くかかるのは、

ちとまずいだろ」

「後見人は」

「あの爺さんだ。

しかし……」

「ご高齢ですよね」

「途中で爺さんが死んだら……

だいぶ面倒になるな」


 眼下の光景を見ながら、

二人は今後の国の行く末を

心配せずには居られなかった。

 



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