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172/253

SOS 172 末弟

 ウルメリア・ルヴァン・デュッセルハイムは

今年で16歳になる若者だ。

 年齢相応の幼さを残しているものの

文武両道で鍛えられた身体はしなやかに強靭で、

顔つきには聡明さが滲んでいた。


 王家の血を正当に受け継いでいる顔立ちは、

凛々しく気高い。

 否定するべき欠点が無く、

ともすれば傲慢になってもおかしくないが、

デュッセルハイムは性格も

公明正大であった。


 正しいことであれば、強きをくじき、

弱きを助けた。

 自分の身分を隠し、大立ち回りを

演じたこともある。


 そして敬虔なノルディア教の信者であり、

結婚までは身を清らかにすべき

という教えを守っていた。


 女性を知らず、そのためか

やや女性と距離をとる傾向があった。

 ある意味、そのウブさが女性を惹きつけ、

男性からも共感ともいうべき

信頼を得ていた。


 つまり、彼には人望があったのだ。


「……陛下が危篤……?

いや、この報告書ではそれすらも

あやふやに書いているな。

まるでどうとでもとれる書き方だ。

……何か意図があるのか?」


 デュッセルハイムは情報ギルドからの

速報書簡に目を通しつつ、

 部屋の中をウロウロと

落ち着き無く歩き回る。


 留学のためウルメリアを離れて、

ガーファングル皇国に来ている

デュッセルハイムには、

どうしても正確な情報までは

回ってこなかった。


 断片的で飲み込みにくい情報の

欠片が細切れで入ってくる。

 にもかかわらず、突如パッタリと途絶えたため、

今はこれまでの情報を

寄せ集めて推理を進めるしか無かった。


「……デュッセルハイム様、

出立の準備が整いました。

……どうなさいましたか?」


 そんな中、扉を叩く音がしたかと思えば、

従者であるファビが顔を見せた。

 愛嬌のある丸顔が特徴の

デュッセルハイムと同年代の少女だ。


「ああ、ファビか?

いや、大丈夫。何でもないよ」


 速報書簡を慌てて後ろに隠す。

王族宛ての手紙を従者が無断で見るのは

法律上は問題があったからだ。


「……準備は整いましたので、

何時でも御用命下さいませ」


 ファビは恭しく頭を下げて、

そのまま部屋を後にした。




 ファビは部屋を出て、使用人が集う

待合室まで足を運んだ。

 彼等彼女等はこの屋敷の中で

デュッセルハイムに仕えるものたちだ。


 そのため、屋敷の外までは

付き従うことが出来ない。


「あ! ファビさん!

どうでしたか?」

「デュッセルハイム様は何と?」


 使用人達が浮き足立つ。

 祖国からの速報書簡が原因だ。

内容は不明だが、緊急事態であることは

周知の事実であったからだ。


「いえまだ何も。

ですが、デュッセルハイム様が

全て決められることです。

今は判断を待ちましょう」

「しかしだな、そうは言うが……」


 別に彼等彼女等は

デュッセルハイムを侮っている

訳ではない。


 純粋に彼を心配しているだけだ。


 ファビは表情を変えずに、

昔のことを思い出し懐かしんだ。


 彼女ことファビはもともと

奴隷身分だ。本来であれば、

王族に仕えることなど出来ないが、

デュッセルハイムのワガママで

それは実現した。


 ファビは思う、願わくば

デュッセルハイムにとって、

不幸が起きないことを。

 自分の大好きな主人が

悲しまないことを。


 数分後、デュッセルハイムは

出立する事を決めた。


 再び扉を開いた先には、

覚悟を決めた表情のデュッセルハイムが

ファビを待っていた。


「若様。いかがなさいますか?」

「行こうか。ファビ。

一緒にお願い出来るかな?」

「仰せのままに」


 最後の王族がウルメリアに戻ってくる。

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