SOS .017 嘲笑
フランドルは憤慨する。
自分の計画が台無しにされたのもそうだが、
冒険者ギルド連中の連帯感の無い有り様も
気に食わなかったからだ。
苛立ちを隠しもせず、
フランドルは冒険者ギルド内で用意された
質素な個室でふんぞり返って考えていた。
「早馬の用意が整いました」
出先のカルマリでは二人しか居ない直属部下の一人、
ライトニング家のガジェットが報告を上げる。
幼さが僅かに残る青年だが、
芯は強く勤勉実直。加えて、戦術ギルド下部の
将官学校でも次席の成績を誇る逸材だ。
同年に王族の子弟が在籍していた為で、
実力は例年の首席と比べても遜色ないと
噂される男。
そんな男を任されたと言うことは、
フランドルもまた相応の評価をされている
ということに他ならない。
先ほどの会議とも言えぬ会議が
終了した直後のことで、
フランドルの高ぶっていた気がやや収まる。
「支度もここに。ご指示を」
もう一人、ウィンバルディア家の
トールが次いで報告した。
フランドルはまた少しだけ落ち着く。
組織とはやはりこういうものだと、
自分で自分に言い聞かせた。
ガジェットとトールであれば、同期生とは言え、
ガジェットが上の立場に来る。
成績ではなく、生来の序列の話だ。
それを考えて発言の順番も
しっかりと順序を守っていた。
流石だ。そしてそのように育てた自分は
正に人の上に立つべき存在だろう。
「まずはミラへ向かう」
「「はっ」」
指示に疑義を唱える事もない。
素晴らしい部下達だ。
そうしてフランドル一行がミラに到着する頃、
オズマット一行は山の麓へとたどり着いていた。
フランドルがミラを目指さなければ、
とっくに《洞穴》に着いている。
何をするにも連携が薄く
行動が遅い冒険者ギルド連中では
こうはいかないだろう。
彼はある目的を持って、ミラを目指したのだ。
「よし、お前達は宿場で準備を進めておけ。
行動確定次第、次の段階に向かう」
「「はっ」」
フランドルは一人、歓楽街へと消えていく。
一般人に紛れ込むように、私服で向かった。
もちろん、戦術ギルドの旗印である
赤織の外套は部下に預ける。
今は誇りを胸に歩いている場合ではない。
しなだれかかるように誘ってくる場末の女達を
迷惑そうに払いながら、フランドルは酒場を目指す。
どこにでもある酒場で、一般人も通うところだが、
この酒場には地下室が設けてある。
そこれでは法律では禁止されている
闇賭博を運営していた。
「おい、支配人を呼んでくれ」
「えっと、お客さん…誰?」
体力だけが取り柄の頭の悪そうな店員が
フランドルを遮る。
よく見れば店員の出自は《交雑》の類であり
純血至上主義のフランドルはさらに気分を害した。
「黙れ、いいからこいつを渡してこい」
店員には多過ぎる微銭と割符を渡し、
近くの椅子にどっかりと腰を下ろす。
しばらくして、先ほどの店員が血相を変えて戻って来る。
「す、も、申し訳ご、ありませんでした。
こ、こちらへどうぞ」
その慌てようを鼻で笑いながら、
フランドルは椅子から立ち上がった。
拍子に椅子が倒れるが、気にはしない。
どうせこいつが片づけるのだから。
始まりにケチがついたと
思わないでも無いが、
身分を隠している以上は仕方がなかった。
「多少、気の利いたもてなしが
あれば良いのだがな」
フランドルは店の奥へと進んで行く。




