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SOS .016 追走

「久し振りっすね~。

この三人で出掛けるのも」


「遠足じゃないんですから、

その発言はどうかと…」


「いいじゃん。ほら、サティも

一個食べる?」


 飄々とも軽薄とも言える調子で、

ピースは同僚の後輩にお菓子を渡す。

 最近流行りの人気店のものだ。


 サティと呼ばれた後輩女性は

本名がジルスチュアートと言うが、

長いので略称で呼ばれている。


 生真面目が服を着ている印象で、

本人もそのまま生真面目な性格をしていた。


 なので、思わず手が伸びそうになるが、

ギリギリの所で踏みとどまった。


「いや、気にせず食べれば良い。

そんな状況でもないだろう」


 向かいのオズマットが促した。


 ピースは色々と軽過ぎるが、

サティもサティで融通が聞かない節がある。


 ただ、職員としての二人の技量は確かなものだった。


 ピース、そしてサティは

冒険者ギルドカルマリ支部の中でオズマット教務官の直属の部下だ。


 本来であれば今の時期は、

新国王の《巡幸》の準備のため忙しく駆けまわっているはずだが、

そういう事態でもなくなってしまった。


 事態を収拾させて戻った頃には、

もう《巡幸》が始まっていても不思議はない。


 三人が抜けた穴は、何とか他の者が賄っているが

事実ギルド内の余裕はほとんど無い。


 サティが神経質なまでに気を使っているのはそういうわけでもあり、

ただ、いたずらに焦っても仕方ないことはオズマット自身が

一番良く理解していた。


「まあ、急いでも仕方が無い。

あいつらが心配なのは変わりないが、

仲間を信じることも大事なことだ」


 オズマットはそう言いながら、

既に一足早く出立した

戦術ギルドのフランドルを思いだしている。


 あいつには、仲間がどうとか言う気持ちは

理解出来ないだろうな、と。

 それが戦術ギルドの特性でもあり、強みでもあるから仕方ないが。


 元々、山越えで安宿一泊分程度の金額がかかる馬車は、

無理のない範囲で道を急いでくれた。


 昼過ぎには、目的の山の麓に到達する。


 本来は朝早くに出て、山を越えて終わる道程であり、

今回は急遽手配をしたためこのような形となった。


「おやっさん、ここでいいから降ろしてくれ」

「いいのかい? 確かに急いだが、本当は山越えまでの金額だぜ?」


 オズマットは御者台に座る年老いた男に笑った。


「山道は自分で登った方が早いしな」


 規定通りの金額を支払い、三人は馬車を後にする。


「さて、準備はいいか?」


「はい、大丈夫です」


「馬車で休めましたからね~、全然余裕で行けるっすよ」


 二人がそれぞれ答える。


 そして、三人は山越えを始めた。


 最低限のモノだけを使い、

ひたすら速度重視で駆けていく。


 それを見た御者台の男は、感嘆の声をあげる。


「…山狗もたまげる速さだな」


 三つの影はすぐに見えなくなる。


 すでに夕日の気配はちらほらと現れており、

今から山を登れば、山頂に着くころには深夜だろう。


 ただ、本当にあの速度で駆けるのであれば

もしかしたら日が沈む前に登頂するかも知れない。



 





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