SOS 166 融合 その3
ゼンの術式が解かれる少し前、
ある兄弟がそこで邂逅していた。
「ここは、どこだ…………?」
王である
ウルメリア・ルヴァン・リッテンハイムは
ぼんやりと漂っていた。
「何だコレは!? どうなっている!
おい! 誰か説明せんかぁ!」
けたたましい声だ。考えなくても
それが弟のアーセルハイムだと分かる。
「……うるさいな、アーセルハイム。
ちょっと静かにしてくれないか?」
「……!? その声は、リッテンハイム?」
こいつは普段自分を呼び捨てにしているらしい。
それを知って、リッテンハイムは苦笑する。
想像した通りだが、実際目の当たりにすると
面食らうものだったからだ。
「そうだ、リッテンハイムだ」
「おい! サイエン! フランドル!
何処にいる!?」
どうやらこのような事態になってすら
こいつは自分を殺したいらしい。
むしろ、そこまで王に固執出来るのは
ある種の才能とさえ思えた。
「多分、無駄だ。
意識以外、全てが削ぎ落とされたらしい」
「どうしてそんな事が分かる!?
お前に分かって俺に分からない筈が無いだろう!」
確かにその通りだ。
神導術の座学も実技もアーセルハイムが上だった。
「……憑依された影響かもな。
少しだけ賢くなった気がする。
…まあ、今更だがな」
「ふっ? お前が賢く?
何かの冗談だろう?
大体お前が王位を継ぐなど、
本来あってはならないことだったんだ」
「仕方が無いだろう。
兄上は二人とも死んだんだから」
「王位はローゼンハイム兄様が
継ぐべきだったのだ!」
アーセルハイムが激昂する。
しかしリッテンハイムはその理由に
違和感を覚えた。
「うん? 長兄は
ホーエンハイム兄様だろう?」
「……違う。あの兄上は
俺やローゼンハイム兄様を否定した。
正しく王の器があったのは、
ローゼンハイム兄様だ」
その時珍しく、リッテンハイムの頭を
推理の力が駆け巡った。
モヤモヤしていた違和感が一掃される。
「……まさか、殺したのか?
ホーエンハイム兄様を?
お前が?」
「俺達だ!」
アーセルハイムは感情が剥き出しに
なっていた。
身を委ねる殻の身体を無くし、
アーセルハイムは感情の高ぶりを
抑え切れなくなっている。
「ローゼンハイム兄様が王位を継ぎ、
俺が宰相となるはずだった!
それがこの国の在るべき姿だったのだ!
それをお前はただ受けるに非ず、
心の中では逃げていた!
そんな男に国が背負えるものかぁ!」
正論だなとリッテンハイムは思った。
道筋と結果はどうあれ、自分でも
そんな人間が王に相応しいわけはないと
感じていたからだ。
そして、そんな男を王に掲げる国など、
不幸極まりないとも思っていた。
「だから俺はお前を殺す!
そして兄様が出来なかった正しき国の
あるべき姿に戻す。
それが、それこそが俺の生まれた意味であり
使命だからだ!」
王族を殺せるのは王族だけ。
遠い昔に聞いた格言の一節を思いだす。
リッテンハイムは怒りも憎しみも感じず、
ただ、感心した。
アーセルハイムが、どれほど歪んでいようと
国のためと信じて行動していることは
何というか、とても王らしいと思った。
「……なら、試してみるか?」
「何……?」
「どちらが王に相応しいか、
《宝剣》に委ねてみないか?」
「なん、だと?」
その時、世界は再び形を取り戻した。




