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SOS 161 雨

 サイエンはどうも調子が狂って仕方なかった。


 本来であれば、四方の門から各地の魔獣をおびき寄せて

カルマリを更地にした後、さらにその魔獣をも滅して

完全な空白地帯にする予定であった。


 そのために、やや面倒な闇人族すらも

誘導してこの地に招いたぐらいだ。

 ただの言葉を話す獣程度であれば、

籠城されてしまえば戦いは長期に及ぶ。

 応援でも到着した日には、泥沼の様相を呈するからだ。


 サイエンはきれいさっぱりとこのカルマリを

一掃したかったのだ。

 それが、どういうわけか段取りが狂いっぱなしだった。


 理由を上げればきりがないが、

一つは相手の戦力が想像以上に強かったこと。

 もう一つは、カイケンとキチョウが明確に敵側に回ったこと。

 そしてもう一つは、

こういう不測の事態が頻発したことだった。


『そこの猿の女よ、

少し聞きたいことがあるのだ』

『あるのだー』

『いや、あんたらなんて知らないんですけど、

いきなり何の話よ』


 ディッケルベルトとファインドベルトの背中から

四つの影がボロボロと零れ落ちた。

 ほぼ意識が無い彼女たちの中で

ゼンは無意識にディーとフィーに《融合化》を掛けており

朦朧としながらも周囲の状況を探れる程度には

意識を保っていた。


 サイエンは一旦仕切り直しをするため、

既にガタが来ている(アルマ)を短距離転移で

手元に引き寄せる。

 無詠唱無起動で転移させ、次いで《宝剣》にも

その転移術式をかける。


『おい待て、話が途中だぞ』

『だぞー』


 ディッケルベルトが踏みしめた前脚に

力を込める。

 バキンと音が鳴り、

 サイエンの転移術式を弾く。


『なっ!?』


『無詠唱かつ無起動とは

なかなか面白いが、

常に展開させておれば

気がついて当たり前だろう』

『だろー』


『(ホント最悪に厄介!)』


 サイエンは一目でこの魔獣が

北方の王だと気がついた。


 性格的に人間と共闘することは

無いと判断していたが、

今回どういうわけか

あちら側に肩入れしているらしい。


 サイエンはゼンをちらりと見た。

『(これが若様の言う、

バタフライ効果ってやつですか?

あーもう、くそったれが)』


 サイエンはこの状況での撤退が

不可能なことを悟り。

 最終手段に出る。


『《回線(リンク)接続》《宝剣解放》』

 王の意識を完全に乗っ取り、アルマの残滓と

意識を繋ぐ。かなり面倒な手順を

踏んでいるが、一時だけなら

この《宝剣》の力を引き出せる。


 手元に無くても、

一度繋がった回線はすぐには消えない。

 《宝剣》とは王を護る為だけに

存在しているモノだから。


 片手で王を抱えながら、

サイエンは算段を立てる。


『(ストックはそこそこある。

殲滅系なら、それなりに効果はあるでしょ)

《塵雨》』


 サイエンは遠隔操作で術式の

効果を押し上げる。


 カルマリの上空に無数の雨粒が

次から次へと作られる。

 その雨粒はただの水ではなく、

触れた物を腐敗させただの塵芥へと

還元させる。


 その雨粒が《宝剣》の後押しを受けて、

膨大な雨量へと変質していく。


『文字通り、全部無かったコトにしてあげる』


 サイエンは仮面の奥で

凶悪に笑った。


 

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