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SOS 159 漆黒

 北門に影が迫っていた。

小さな民家程のその肢体は

まさに獣のそれだった。


 大きく強靭な口と牙、光を弾く

漆黒の毛並みは美しくも恐ろしい。

 しかし、あまりに早すぎる動きのため

それを目に留めることすら許されない。


 普通の人間には、風が通り過ぎたとしか認識出来ないほど

二頭一獣であるディッケルベルトとファインドベルトの術式

《奔駆》の速度はけた違いだった。


「「「「……!!!!」」」」

 ゼンの術式でその身体に張り付いている四人は

息を止め続けるしかなかった。


『口を開ければ肺が裂けるぞ?』

『おしゃべり禁止ね』


 ディーとフィーの軽い忠告を受け、

四人は息止めの記録に挑戦し続けていた。

 まだ余裕はあるが、何時まで続くのか分からない。

と、そのように考えているうちに、

北門が薄っすらと見えてくる。


 今までの移動速度からすれば、

比べようもない速度だ。


『いろいろ面倒だ。一気にカタを付けるぞ』

『雑魚ばっかしかいないから余裕』


 その口で術式を紡ぐ。

言葉は分からないが、とても特殊なものであることは

理解出来た。


 二頭一獣は二つの口を持ち、その各々から

呪文のような言葉が繋がって紡ぎ出される。

 二重奏のような心地よさだ。


 そうして、眼前に北門が迫る。

 軽く一足飛びでその北門を越え、

さらに門の天辺を蹴り上げ上空高く

その身を押し上げる。


『『殲紋響』』


 彼らの声には魔を滅する響きが宿る。

魔とは敵であり、敵意そのものだ。

 自分の存在に害を成す者を直接的に攻撃する術式。

 その特異性は、一切の物理的衝撃を加えることなく、

術式、その中でも敵対性を所有する純粋な『敵意』のみを

攻撃することだ。


 北門の上空から放たれた、破魔の遠吠えは

カルマリを一気に飲み込むほどの勢いと速度で

すべての住民や獣や魔物に降り注いだ。


『一気に行くぞ?

お前らの言う敵はあそこだな?

中央の塔の先端に、膨大な力が集まっている。

中々面白そうな趣向じゃないか』

『イケイケー!』


 空を踏みしめ、ディーとフィーは嬉々として

さらに高く舞い上がった。

 急激な高低差に、背中に張り付いている四人は

ほぼ気を失っていたので

この眼下に広がる壮大な景色を目に焼き付けることは出来なかった。


『(でも兄様、どうしてこんな面倒なことを?

普通に殲滅したらいいんじゃないの?)』

『(こいつらには協力してもらわんといけないからな。

人間とは面倒なもので、強きが弱きを殺すのを

善しとしない生き物なのよ。

どうせ生かすも殺すもさほどの差がないなら、

生かせるものは生かしておいた方が都合がよい)』

『(? 良くわからないけど、人間って面倒ねー)』

『(ああ、しかしだからこそ、面倒な術式も

多く保有している。ようは使いようだ)』


 その漆黒の影が、太陽の光を背に受け、

領城を黒く塗りつぶした。


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