表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
158/253

SOS 158 開放

 (アルマ)は既に本気を出していた。

 しかし、本気にはなり切れなかった。

自分の攻撃をことごとく捌くヒナギクを見ながら、

これが命を懸けた戦いではなく、

昔の懐かしい訓練を思いだしていたからだ。


 受けるべきところで受け、避けるべきところで避ける。

そして攻撃するべきところで攻撃をする。

 この単純な反復動作の応酬が戦いの本質だろうが、

このヒナギクという女は現時点で

(アルマ)を上回る位置に存在していた。


 昔々、師匠に鍛えられていたころの

みずみずしい感覚がよみがえってくる。

『…あの子にも、そういう存在が現れるのだろうか?』


 ふと、この戦いに参加した理由を思いだす。

昔の感覚を取り戻すために敢えて忘れていたが、

やはり(アルマ)にとって、いまこの場所は取って付けた

死に場所のようなものだった。


 あの頃のような本気には、どうしてもなれないのかもしれない。


「《逆鱗》」

 ヒナギクの刃が《宝剣》に触れる。

その刀身自体は無事だが、その刀身が纏う術式が揺らぐ。

無理やり発動させて維持させていた術式の綻びに

ヒナギクの術式が入り込む。


 何度目かの抗戦で、(アルマ)はヒナギクの

本質に触れていた。

 彼女の術式の根本にある原則は

『逆転』と『反転』がそれだ。

 物事の理を逆転させて反転させる。

彼女の根幹を成すのが、その渇望なのだろう。


『一体どういう人生を歩めばそうなるのか…』

 (アルマ)は同情とも共感とも違う、不思議な感覚に触れていた。

彼もまた波乱万丈な生き方を強制された一人だが、

彼女もまたそれに近い存在なのだろう。


 神導術は万能ではない。

それはどこにも記載などされていないが真実だ。

 神聖なもの故に疑うことは許されず、

万物を全て網羅する完全無欠の神なる術。

などと扱われているが実際はそうではない。


 意思を持った存在が扱う限り、そこには意志が介在する。

場合によっては遺志すらも、影響を及ぼす。

 加えて言えば、周りの影響も変化を及ぼす。


 そのため、獲得出来る能力とは

 自分自身の生き様による。

 自身が本質的に求めていない能力を得ることは

出来ないのだ。


 何度目かの攻防の後、(アルマ)の振るう

《宝剣》の術式に決定的な綻びが生まれる。


『…仕方ない。開放するか』

 これをすれば(アルマ)として維持している

自分の存在値は消滅して消えてしまうだろう。


 しかし、それを躊躇するほど、

(アルマ)には未練が無かった。


『《宝剣開放》』


 これをすればどうなるか、など露ほども考えず

彼はその『本質』を発現させる。


 一瞬の沈黙を過ぎて、その《宝剣》は

すべてを飲み込み始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ