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SOS 121 指輪

 かくして、

謁見の間にアーセルハイムが通される。


「……どうして病室では無く、こちらの場所なのだ?

兄上……もとい、陛下のご容態は優れないのであろう?」

 現役の事務方最高位に座する宰相相手でも

アーセルハイムの不遜な態度は無くならない。


 そのことに目くじらを立てることもなく、

宰相であるマックスは咳ばらいを一つする。

「優れないからこそ、陛下には病室での適切な回復処置を

受けて頂いております。

お身体に障ることが無いよう、

我々はこうして席を外しているということでございますよ」

「なるほど、兄、陛下はご無事のようだな。

それは重畳。何よりの朗報だ」


 謁見の間では玉座は空席となっており、

王弟であるアーセルハイムと宰相マックスは

その玉座の眼下で向かい合って対峙している。


 アーセルハイムの従者たちは、謁見の間の外で

待機を命じられていたので、

ここに居るのは彼一人だ。


 宰相マックスの傍にはリオンが控えており、

油断なく現状の推移を見守っている。

 それは直接的な戦闘に不向きな

マックスを補佐するためだった。


 一方、玉座の裏手には、

フランドルと近衛兵長がいる。


 気配を完全に消しているらしく、

そこにいると分かっているリオンでさえ

ともすれば存在感知が出来なくなるほど、

その気配立ちは完璧だ。


「(……それだけ見ても、

本人とは思えない技量ですね)」

 フランドルが生きていれば

激昂するような感想をリオンは抱いた。


「おや、そこにいるのは、エルダナリヤ家のご令嬢。

聖導士リオン様ではないですか?」

「はい、戴冠式以来にございます。

アーセルハイム様」


 面識のあるリオンは、(うやうや)しく礼をする。

 兄とは違い、異性にそれほど傾倒しない

アーセルハイムでも、リオンの美貌と気品には

気圧されることも多かった。


 しかし、今のアーセルハイムは

リオンを目の前にしても、揺るぐことが無かった。


「(……不思議なものだ。

王にでもなれば、

彼女にも簡単に命令が下せるのか)」


 もちろん事はそう単純でもないが、

ある意味では真実だった。


「して、早く陛下との面会を

希望したいのだが?」

「なりません」


 リオンがピシャリと否定する。


「アーセルハイム様。

貴方には、陛下暗殺の首謀者である

疑いが掛かっております」

 マックスが言葉を繋ぐ。


「ははっ。だろうな?

しかし、証拠は無いだろう?

それに、もし私の息のかかった者が

独断で事を為したとして、

それは私の罪に成るのか?」


「今はまだ明確な罪に成らずとも、

もしそうであれば責任は御座います」


「陛下を御し、御守り出来なかった

お前たちが責任を口にするか?」


 マックスとリオンが表情を曇らせる。


「私の罪は推論だが、

お前たちの咎は明白であろうが!」


 アーセルハイムの怒号が響く。

王家の血がそうさせるのか、

その揺るぎない言葉に二人は揺らぐ。


「……まあよい。

私は物分かりの良い人間だからな。

話を簡単にするため、こんなものを

用意しているのだよ」


 アーセルハイムは懐中から、

指輪を取り出して

自分の指にはめた。


 マックスとリオンはアーセルハイムが

何をしているのかわからなかったが、

暫くしてマックスが声を荒げる。


「……? そ、それは、

国宝である断罪の指輪!?

なぜ持っている、

いや、なぜ持ち出した!」


 敬意のある言葉遣いも忘れ、

宰相は目を剥く。

 あの指輪は曰く付きの代物だったからだ。


「汝らに問う。

陛下に偽りの感情を抱き、

害を成す者。

地にひれ伏し、赦しを懇え!」


 導言に従い、指輪の力が発動する。

マックスとリオンの身体が強制的に床へと

張り付けられた。


「ぐっ!」

「あっ!」


「おやおや、お二人とも

揃って陛下に仇なすおつもりでしたか?

いけませんな、そのような

心積もりで陛下の傍に居るなど。

不敬も不敬でしょう」


 断罪の指輪の力は強い。

 リオンとて指一本すらまともに

動かすことが出来ない。


「……これで分かっただろう?

誰が正しく、誰が強いのか。

お前たちも、そう思うだろ」


 マックスはアーセルハイムを睨み付けるが、

アーセルハイムはマックスを見てはいなかった。


 彼が見ていたのは、その後ろだ。


 そこではフランドルと近衛兵長、

二人が立っていた。

 その余りに無防備な姿に、

マックスは自分の目を疑う。


「さあ、陛下の敵はここにいる二人だ。

職務に従い、この場で殺せ」


 アーセルハイムの言葉に、

フランドルと近衛兵長は反応する。


『『承知しました。仰せのままに』』


 リオンの言葉は正しかった。

疑うわけでは無かったが、

その場で信じることが出来ず、

確信を得るまで後回しにしたツケだった。


 敵に通じているのであれば

反対に情報を得ることも

流すことも出来る。

 その欲目もあったのは確かだ。


 アーセルハイムは既に、ギルドの枠を越えて

根回しを終えている。

本気の国盗りを目論んでいたのだ。



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