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SOS 120 指摘

 王に呼び出されて、リオンは謁見の間に来ていた。


 王都よりは格式の下がる広間だが、

副都カルマリの領主が年に数回だけ使うものであり、

それなりの格調のある空間。


 今回は、この国の最高権威の象徴である

現役の国王陛下が使用することもあり、

可能な限りの装飾が施されていた。


 もちろん、この装飾も只の飾りではなく、

全て国王陛下を守護するための術式が

折り込まれている。


 元々予定していた、陛下と近郊の有力者による謁見は

既に無きものとなり、今はこの広間が国の中枢であり、

作戦本部そのものとなっていた。


「御苦労様です、リオン殿。

急な帰還のところすみませんな」

 宰相のマックスが険しい表情で、

形ばかりの言葉を述べる。


「いえ、勿体なきお言葉に存じます。

それで、陛下の御身は……?」

 言葉を濁し、明言を避けるリオン。


「今は安定しております。

主治の言葉を借りれば、

安静にしていれば快方へ向かうとのこと。

もっとも、まだ部位回復の治癒術式に

耐えられるほどではありませんので、

しばらくは予断を許さない状況に変わりはありませんが」


 それを聞いて、リオンはほっとする。

それと同時に、疑問が出てくる。


「あの、宰相様……よろしいでしょうか?」

「何か?」

「先ほど部位回復、と仰られましたが、

今回は毒を盛られたわけでは

……ないのですか?」


 リオンは一報を聞いて、てっきり服毒だと合点した。

この謁見の間にもあるように、陛下には対術、対刃などの

攻撃に対しての防護術式が幾重にも張られている。


 それに《宝剣》もだ。

最高権威の象徴とも言われる《宝剣》は

保有しているだけで絶対的な神力を誇ると言われる

国宝級の武器だ。

 それを抜いて害を成すには、

いわゆる毒殺の類しか思い浮かばなかったからだ。


「……違います。単純な、肉体的損傷です」

「え?」

「故に、今回の相手は、ただの賊ではありません」


 宰相は淡々と告げる。

「この部屋の術式は、最高峰の防護術式ですが、

それでも抜け穴はあります。

そしてそれは《宝剣》にも同じことが言えます」

 

 リオンは自分の考えが見透かされたようで、

背筋が寒くなった。

 マックスの視線は真っすぐリオンを見ているが

その実、リオンを見ていないと思えるほど

視線に揺るぎはなかった。


「どちらも、血契にて発動する術式です。

つまりは、近しい者の血液を持ってすれば、

発動や制御も不可能ではありません」

「しかし、王族方の血液素材など、

手に入れようが……」

「よって、これは王族である

本人の反逆という結論になります」

「……!」

「具体的には、弟君

ウルメリア・ルヴァン・アーセルハイム」


 リオンが想像していた通りだが、

改めて告げられると、想像以上の恐ろしさを感じた。

 ここで、国内紛争が始まると明言されたに近い。


「……理解しました。ですが、

一点問題がございます」

 リオンはそれでもなお、自分の正義を貫く。


「何がだ?」

 マックスはリオンの思わぬ言葉に対し、眉間に皺を作る。

ここは反論すべき場では無いだろうにと。


「陛下の側に、戦術ギルド所属のフランドル殿が

いらっしゃいますよね」

「……ああ、そうだな」

「彼は、私が討伐しました」

「……は?」


 リオンはマックスを見据えて言う。

「彼は賊に篭絡され、正気を失っておりました。

そのために、私は彼を討伐致しました」

「? 何を言ってる? 

フランドル殿は、ここに居るのだぞ?」

「陛下の側に居るフランドル殿は、偽物です。

賊の作った人形なのです、宰相様」


 宰相の顔が、止まる。

リオンが冗談を言うような人間でも、

冗談が言えるような場所でも無いことを

マックスは充分認識していた。


 けれど、マックスはリオンに

敢えて聞きなおす他なかった。


「本気か? 

あなたは本気で言っているのか?」


「はい。神に誓って」

 エルダナリヤ家の人間が神に誓うとは

そういうことだった。


 宰相は珍しく狼狽える。

先刻見たフランドルに怪しげな部分は無い。

戦術ギルドにどっぷり漬かった男という印象。

良くも悪くもそういう人間だと分かった。


 しかし、リオンはあれが人形だという。

馬鹿な、と思うが一笑に付すことが出来ない。

 リオンが嘘を言わないのもまた

エルダナリヤ家に漬かった人間である

証左のようなものだからだ。


「宰相様、ご判断を」



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