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SOS 118 自尊

「……アーセルハイム様、本当に大丈夫なのでございますか?」


 心配性の執事長がアーセルハイムにお伺いを立てる。

その様子を見て、アーセルハイムは鼻を一つ鳴らす。


「大丈夫だと言っておろう?

わたしは兄上の暗殺事件には全くなんの関与もしていない。

これ以上ないほどに潔白なのだから」

 最高級の葡萄酒をあおりながら、アーセルハイムは

殊更上機嫌に答えた。


「あの、今は陛下とお呼びするべきでは……、

それに、まだ暗殺事件と決まったわけでは」


 細かいことにうるさい執事長だと、

アーセルハイムはいつも思っていた。

しかし、この執事長を据えることを決めたのは

先代の王であるため、アーセルハイムには

更迭する権限がない。

 それを思い出し、やや気分を害するが、

これからを思えばそんなことは些末な問題に過ぎないと思えた。


「わかった、陛下だな。

ただ、状況を鑑みれば暗殺事件だというのは明白だろう?

黒幕は分からないが、まあ殺しきれなかったことを見れば

大した奴らではないことは充分予想出来る。

証拠固めが終れば、実行犯を捉えて芋蔓式に首謀者まで

割り出すのは容易だ。

心配するようなことは何も無い」


「しかし、事はそう単純ではありませんぞ?

もしこれが罠であれば、

不利になるのは我々でございます」


「くどいな?

俺は潔白だ。

もし、誰かが勝手に気を利かせて

陛下を害したのだとしても、

それが俺に関係があるのか?

大体、俺が犯人であると証明が出来るのか?

証明出来ないものは、根拠にもならんさ。

お前は堂々としていれば、それで良い。

後は俺が上手く誘導するさ」


 物事を簡単に捉えがちなアーセルハイムは

執事長の助言に耳を貸そうとはしない。

 そもそも、理論と理屈で全てのことが解決できる、

いや、自分の思い道理になると思っている彼は、

そういう生き方を実際に行ってきた。


 自分の価値と能力に自惚れを持っていたアーセルハイムは

既に、王亡き後、未来の行く末を夢想し始めていた。


「まずは、陛下のご容態を確かめて、それからだな。

あの情報ギルド連中がどこまで正しいことを言っているかわからないが、

情報事態に虚偽があれば、それだけで罪に問える。

今後の交渉材料として考えれば、もし陛下の容態がかすり傷程度でも

充分な見返りがある。

反対に、あの情報通りなら、まさにそれは俺の夢見ていた道だ。

なんの問題も無いではないか。

どうだ? 俺の思考に、一片の誤りでも見つかったか?」


 自身満々のアーセルハイムは、

その切れ長の目を執事長に向けた。


「……いえ、ございません」

「だろうな。

まあ、お前の心配性は今に始まったことじゃない。

気にせず励めよ?」


 どうせ、こいつともあと少しの間だけの関係だ。

そう思えば、アーセルハイムの心はとても軽くなった。


 アーセルハイムは、今やっと自分の人生を歩き始めた。

そう感じ、無上の喜びを噛みしめた。


「もうじきだな、カルマリは」

「はい、じきに着陸準備に入ります」

「落ち着いてやれよ?

登場は優雅でなくてはいけないからな」

「はっ!」


 葡萄酒に口をつけようとして、アーセルハイムは思いとどまる。


 場合によっては、このまま

戴冠の儀へ向けた打ち合わせに入ることも考えられる。


 同盟国元首とも緊急通信の可能性も出てくる。


「ふむ、王とは中々大変な仕事だな。

気遣いが多くて参るぞ」


 すでに王になった気分のアーセルハイムは

鷹揚に最後の一口をあおった。





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